強化方針を打ち出せていないイタリアサッカー協会
ボールを支配し敵陣に押し込んでも、中途半端な精度の攻撃を続けて相手を崩せないイタリア。その一方でスウェーデンは集中した守備を見せ、ゴール前に入ったボールは誰彼問わずフォローに回って弾き返した。インモービレへのスペースは絶対に空けず、最後まで無失点。イタリアは、戦術的な守備でもスウェーデンにお株を奪われた格好で屈した。
スタンドからは確認できなかったが、試合中にアップを命じられたダニエレ・デ・ロッシが拒否するシーンがテレビ中継で大写しになっていたという。その際の読唇術で「オレを入れてる場合じゃないだろ、勝たなきゃダメだ、引き分けじゃまずいんだから」とスタッフに怒っていたことがあきらかにされていた。
試合後に彼は「ロレンツォ・インシーニェやエル・シャーラウィあたりを入れるべきなのではと思った」と地元メディアに告白していた。こういったところからイタリアの、とりわけヴェントゥーラ監督の混乱が見てとれた。
スペイン戦の大敗以来、混乱を立て直せないままプレーオフに突入し、そして敗退。「史上最弱のアズーリ」呼ばわりされたアントニオ・コンテ前監督時代とは違って、若手を中心に多少充実した戦力を手にしていたにもかかわらず、結果的にチームを弱体化させてしまったヴェントゥーラ監督の責任は小さいとは言えない。だがそもそも、そんな彼をバックアップする体制も果たして整っていたのかどうか。
2014年のブラジルW杯グループリーグ敗退をきっかけに、ポゼッションサッカーへの転換という育成路線を放棄してからそれに代わる強化方針を、FIGCは打ち出せていない。アズーリの不振は、決してプロビンチャばかりで国際経験の少ない指揮官ひとりをすげ替えれば済む、という問題ではあるまい。
(取材・文:神尾光臣【ミラノ】)
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