「もっとガムシャラに死に物狂いで」(吉田)
さらに、吉田が強調するのが「彼ら以上にガムシャラにハードワークすることの重要性」だ。ブラジル戦では前半から失点が続いてメンタル的に受け身になったが、もっと勇敢に挑まないとベルギー相手の下剋上は不可能に近いと吉田は語気を強める。
「南アフリカW杯の前に闘莉王(田中マルクス=京都)も言ってましたけど、僕らはうまくないんで、そこの差を埋めてかなきゃいけない。もっとガムシャラに死に物狂いでやってかなきゃいけない。前の選手は1回だけじゃなく、2度追い、3度追いしてかなきゃいけないし、後ろの選手ももっと体を張らなきゃいけないだろうし。そういうガムシャラさがちょっと足りないと感じている。そこは試合の前に1つ付け加えておきたいです」と日頃、冷静沈着な背番号22が感情を高ぶらせた。
そんな熱い思いは、日の丸を背負う人間に真っ先に求められるもの。最近は戦術や技術が重視され、そういう部分があまり語られなくなっているが、一番重要なのは、やはりガムシャラにボールや相手を追う姿勢に他ならない。それを強く押し出せた南アフリカW杯で日本はベスト16入りを果たし、逆に自分たちを過信していたブラジルW杯では勝ち点1の惨敗を喫した。
4年前にブラジルで苦杯をなめたチームの一員だった吉田は、何としても同じ轍を踏みたくないと強く思っているはず。同じ悔しさを体験した本田圭佑(パチューカ)、岡崎慎司(レスター)、香川真司(ドルトムント)の3人が代表招集見送りとなっている今だからこそ、自分が言わなければならないと感じたのかもしれない。
見る者の心を揺さぶるような闘争心を選手全員が示した先には、ベルギーを追い込む好ゲームが待っているはず。ちょうど4年前の2013年11月、同じ敵地でのベルギー戦(ブリュッセル)で、日本は柿谷曜一朗(C大阪)、本田、岡崎の3ゴールで強豪を撃破し、チームに漂っていた沈滞ムードを一掃した。
当時も最終ラインを統率していた吉田がその再現の原動力になってくれれば理想的なシナリオだ。いずれにしても、ブラジル戦の反省を踏まえ、ベルギーの豪華攻撃陣を手堅く封じることが勝利のために欠かせないポイントとなる。
(取材・文:元川悦子【ブルージュ】)
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