モンスターかアーティストか
言葉は悪いがサッカー界にはバケモノが何人かいる。ルカクはその1人だ。
193センチ、94キロの巨体。これで足が速い。ボーンと蹴り出されたボールを広いスペースで奪い合うとき、ルカクは最強のFWである。でかいストライドでたちまちボールに追いつき、絡んでくるDFはぶっとばし、さっさとゴールを決めてくれる。草サッカーでこの人がいたら最強間違いなしだ。
ただ、豪華メンバーが揃ったベルギーが、そんな草サッカーみたいな縦ポン+行ってこいモンスター的な戦い方をしたくないのはわからんでもない。中盤にはとびきりのタレントがいて、FWにもナポリで開花したドリース・メルテンスがいる。
華麗なるパスワークでワールドカップ史上に名を残すチームにだってなれるかもしれないからだ。しかし、その夢は過去2度に渡って夢に終わっている。結局、頼むぞフェライニ! になるのなら、頼むぞルカク! のほうがまだスマートというものかもしれない。
ルカクにも責任の一端はある。カウンター無双のストライカーは、スペースがなくなると威力が半分以下になるからだ。相手にがっつり引かれたときのルカクは、燃料切れの巨大ロボみたいに佇むだけだ。
ボールが入ってくれば体を張ったキープはできるし、空中戦もかなり強い。しかし、小さなスペースで敵のマークを外す動きがほとんどない。パスワークにもあまり絡めない。前線の蓋になってしまうルカクは、ベルギーがポゼッションで行き詰まる原因の1つといっていいだろう。
渋滞中にもかかわらず、強引にドリブルで何とかしようとするアザールやカラスコもどうかと思うが、前線にアクションを期待できないのがそもそもの原因なのだろう。
【次ページ】堅守速攻のマンUか、それとも華麗なるナポリか