W杯に向けて両サイドの人選に選択肢を
ブラジル戦では本来の持ち味を出せなかった原口元気だが…【写真:Getty Images】
浅野と久保の右サイドを比較すると、ブラジル戦に先発した久保は45分間通して守備に忙殺され、攻撃時に孤立してしまった。不完全燃焼感を覚えたままピッチを後にしている。「もうちょっと前でボールを奪いたかったけど、全体に引いてしまっていた。ネイマールがボールを持った時に(酒井)宏樹くんと挟みにいくように言われていたので、それはできたけど、攻撃のところのクオリティを出せなかった」と本人も悔しさを吐露していた。
仮に浅野が試合の頭から出ていても、同じような苦しみを味わっただろうし、ブラジルの守備が緩くなった後半から久保が出ていれば、ゴール前でフィニッシュの精度の高さを発揮できた可能性もある。それを見極めるためにも、2人を反対の順番で起用するテストをこの機会にやっておくことは今後に向けて重要だ。
それは左サイドにも言えること。タッチライン際を上下動し、凄まじい勢いでとスプリントを繰り返せる原口は、ブラジルの右サイドバック・ダニーロ(マンチェスター・シティ)のマークと、ウィリアン(チェルシー)に対するプレスバックに追われて本来の攻撃の鋭さを出し切れなかった。乾が出てきた終盤の時間帯はブラジルも勝利を確信し、プレーの強度が下がっていたからドリブラーとしての力を発揮しやすかったのだ。
原口も後半に出れば、同じだけの仕事ができるポテンシャルはある。最近1ヶ月はヘルタ・ベルリンで2試合しか出場していないため、絶好調だった昨年同時期に比べるとゴールに向かうキレや感性がやや失われているところもあるが、ベルギーのアウトサイドや3バックの選手はブラジルほど攻撃的ではなく、日本側が主導権を握ってチャレンジできる可能性がある。
それを視野に入れて、乾と浅野が強度を落とすことなく、畳みかけていけば、サイドアタックの迫力は一層高まる。そんな形になれば理想的だろう。
ハリルホジッチ監督は、戦力をうまく回しながら強豪から勝ち点をもぎ取ることを考えている。そのためにも、両サイドの使い分けというのは考えていかなければならないテーマとなる。まずは浅野と乾の動向を見つつ、久保と原口をどう組み合わせていくべきか。そこに注目して日本代表のベルギー戦をチェックしたい。
(取材・文:元川悦子【リール】)
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