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日本代表 7年前

大久保嘉人の回想。日本代表、W杯での成功と失敗。過去2大会の対照的な経験

text by 加部究 photo by Shinya Tanaka, Getty Images

守備的布陣への揶揄も意に介さず。「前評判を覆したい思い」で掴んだ結果

2010年の南アフリカ大会では全4試合に先発出場。日本の決勝トーナメント進出に貢献した
2010年の南アフリカ大会では全4試合に先発出場。日本の決勝トーナメント進出に貢献した【写真:Getty Images】

 合宿期間中に組まれた親善試合では、対戦相手イングランドのファビオ・カペッロ監督に「日本は4-3-3というか、9-1というか」と、守備的な布陣を揶揄された。

「何を言われても全然問題ありませんよ。ワールドカップで勝つために、勝ち点を取るために、このやり方を選択した…。実際僕らはイングランドより弱いわけだから」

 割り切ってやるべきことを整理しても、不安は拭い切れなかった。

「初戦が一番大事だと、みんな話していました。カメルーンのチームで内紛が起こっている情報も入って来ていたし、この試合を勝たないときついな…、と」

 守備を固めるためにブロックを下げたので、攻守に長い距離を往復する両サイドのアタッカーには負担が増した。

「左の僕と、右の松井(大輔)さんのところは、極端にきつかった。人生で一番守備をしました。でも選手たち全員でやると決めたし、一人でも休めば、そこからやられる可能性がある。とにかく必死でやり抜きました」

 日本は39分、右サイドで松井が切り返して入れたクロスが逆サイドへ抜け、本田圭佑が均衡を破った。逆に大久保は、クロスに合わせて中央に飛び込み、長身のステファン・エムビアに空中戦を競りかけていた。

「このゴール前での動き方は何も決まっていませんでした。ヘディングを競ることで、裏に抜けてくれたら、と飛び込んだんです。この試合に勝って(1-0)結果が出たことで、このやり方でいいんだと確信が持てたし、チームの雰囲気も一気に明るくなりました」

 初戦で勝利をした日本は、弾みをつけてグループリーグを突破。8強を賭けた戦いでパラグアイにPK戦の末に敗れたが、国外では過去最高の成績を残した。

「大会前が散々だったので、それを思えば良かったし、前評判を覆して見返したい思いもあった。でもパラグアイには勝てたかもしれなかったし、勝てばスペイン(優勝国)と対戦できたかもしれない。(ボールを)回されまくるかもしれないけれど、このスタイルで戦ったらどうなるのかな、と思いました」

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