「サンドイッチの守備」は斜めの関係にも
ハリルホジッチ監督は10月シリーズに向けた代表メンバー発表の記者会見で、パリ・サンジェルマンがバイエルン・ミュンヘンを相手にボールポゼッション率で劣勢になりながらも3-0で完勝した試合のスタッツを提示し、ポゼッションに拘泥することに警鐘を鳴らしていた。庄司氏によれば、ボスニア出身のフランス人監督がボール保持にこだわっていないことはパスのやり取りを見ても現れているという。
「ポゼッションサッカーと呼ばれるスタイルのビルドアップを志向していれば、センターバック間のパス交換が多くなります。ですがオーストラリアとの2試合ではその数が多くありません。そもそもポゼッションで崩そうというプランでなかったことは明白でしょう。
監督はPSG対バイエルンの試合を引き合いに出していましたが、パリはセルティック相手にポゼッション70%で5-0勝利という結果もあります。そういうチームがポゼッション率で低くなっても勝てるというだけで、ボール保持をしないほうがいいと言っているわけではないことには注意が必要ですね。ボールポゼッションと勝利がイコールに近いと語られるのがおかしいというだけです。ポゼッションを優先していないから守備的だと言われるのが不満だったのかもしれませんが」
いっぽう守備面ではどのような構想が描かれているのだろうか。庄司氏はメンバー発表時にハリルホジッチ監督が発した言葉にそれを読み解くヒントがあるのではないかと指摘する。
「ハリルホジッチ監督はブラジル戦について『サンドイッチの守備、カバー、ゲームの予測、密度といってもなかなか分からないかもしれないが、そういったテーマが重要になってくる』と言っていました。このなかでサンドイッチの守備とは相手を前後から挟むことだと思いますが、今のサッカーでは、それはピッチの上下だけでなく斜めの関係でも考えられているはずです。
図1にあるように、相手がサイドでボールを持ったときには斜めの軸でスクリーンを張ってプレッシングをかけるイメージです。単純な上下のサンドイッチだけではなく、このような斜め方向でのサンドイッチ、カバーリングをコンパクトなかたちで実現しようということだと思います。
となると、守備に入ったときにはさまざまな方向への素早いスライドやプレスバックが求められるので、スプリントが必要になるのは当然です。先に言ったように今の日本に揃っている人材から考えると、守備の優先順位を高くしたプランにせざるを得ないので、この守備のコンセプトに対応できない選手は起用しにくいんだと思います。その点で今の香川では難しいと考えているのでしょう。
先日のバイエルン・ミュンヘン戦で香川がプレーしているのを見ましたが、守備に入ったときにずっとジョギングで、インテンシティが不足しているのは明らか。スクリーンの役割をまったく果たせていませんでした。ここが改善しないと本大会のメンバー入りは厳しいかもしれません」