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Jリーグ 7年前

大宮・石井正忠新監督が挑む「奇跡のJ1残留」。残り3試合で4ポイント差、火中の栗を拾う覚悟

text by 藤江直人 photo by Naoto Fujie, Getty Images

前身のNTT関東に所属。チームへの思い入れ

 別々の道を歩み始めてから四半世紀以上の時間がたっても、石井監督は2年間で43試合に出場した古巣のことを忘れていなかった。就任会見の冒頭では、こんな言葉も残している。

「今回のオファーを受けるにあたり、悩んだ部分はあります。しかし、前身であるNTT関東に2年ですが所属していたため、このチームに対する思い入れも非常にあり、この状況をどうにか脱したい、リーグ戦の残り3試合を勝利で終えたいという気持ちで受けました」

 昨シーズンの年間総合順位で、クラブ史上で最高位となる5位と躍進したアルディージャだったが、今シーズンは開幕6連敗を喫する厳しいスタートを強いられた。第13節を終えて最下位に低迷していたことを受けて、2014シーズンの途中から指揮を執ってきた渋谷洋樹監督が解任される。

 ワールドカップ・アジア最終予選でJ1が中断する期間で再建させるために、いわばカンフル剤的な意味も込められていたが、コーチから昇格した伊藤彰監督のもとでも3勝8分け7敗と浮上のきっかけをつかめないまま残り3試合を迎えていた。

「前節のセレッソ大阪戦が終わって中断期間に入りましたが、この中断期間を生かそうと考えた結果、総合的に判断して監督と強化部長の交代を決断しました」

 会見に出席した森社長はシーズン中で2度目の指揮官交代、しかも同じシーズンで同じカテゴリーを戦った別のチームを率いていた監督を招へいする異例のケースに至った背景を説明した。そのうえで、来シーズン以降に関してこう言及している。

「石井監督に来ていただいたのは、残り3試合を勝ってJ1に残留する思いを成し遂げるためです。契約期間については差し控えさせていただきますが、まずは残りの3試合をしっかりやっていただくという契約です。それを踏まえて、(シーズン終了後に)我々の意思をお伝えしたいと考えています」

 石井監督も中・長期的なビジョンに関しては「考えていません。3試合以降のことは、クラブが判断してくれればと思います」と明言。アルディージャから伝わってくる残留への切実なる思い、それを託されたことでみなぎってくる覚悟と責任が、会見の途中で図らずも涙腺を緩ませたのだろう。

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