「むしろ10番は嫌です」
今年6月から復帰している日本代表では年齢的にも上の方になり、若い選手たちに自ら声をかけたり、笑わせたりするなどのサービス精神も発揮できるようになった。ピッチ上でも安定感が出てきて、攻守両面でボスニア人指揮官が求める高度なインテンシティーを示している。今こそが、まさに乾の絶頂期なのかもしれない。
今回代表から漏れた香川真司(ドルトムント)に代わってエースナンバー10を与えられるのも、ある意味で当然のこと。本人は「自分のものではないので。真司が今までつけてきて、真司のものだと思っているので」と謙遜し、「むしろ10番は嫌です。10番をつけると出られないというジンクスもあるので」と苦笑いしていたが、今回の25人の中で誰よりも10番が似合う選手なのは間違いない。
10月のニュージーランド戦(豊田)で自身がお膳立てしたゴールを決めた同い年の倉田も「似合ってると思いますよ。1回、真司が離脱した(6月の)時も貴士がつけたので、いいんじゃないですかね」と太鼓判を押していた。
その乾に託されるのは、周囲を落ち着かせ、コントロールしつつ、攻守のスイッチを入れる役目。バルサやレアルと対峙し、マルセロ(レアル)やパウリーニョ(バルサ)、ネイマール(PSG)の迫力を肌で感じている彼はそれができる数少ない存在だ。
「ブラジルはレアルやバルサより力強さみたいなものが加わってくる。ホントに難しい相手だと思うので、1人1人が120%を出さないと。それでも勝てるかどうか難しい相手ですけど、それくらいやる気持ちで行かないといけない」と語気を強める新背番号10がチームを力強くけん引する姿を、ぜひとも我々の目に焼き付けてもらいたい。
(取材・文:元川悦子【リール】)
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