ハリルホジッチ監督の真価が問われる2戦に
「どちらかというとパワー系のチーム」とハリルホジッチ監督が評価するベルギーも戦力では明らかな格上だが、指揮官が「しっかり全員で守備をして、ボールを奪ったら得点を取りに行く」と語る方向性はブラジル戦より明確に発揮しやすいかもしれない。
サイドの高い位置にボールを運ばれると危険な状況が起こりやすいため、攻撃の起点になる中盤の選手に対し、より高い位置からプレッシャーをかけてボールを奪いにいくことが重要になる。
その戦い方に適したオーガナイズはボールを奪う能力が高いMFを3枚並べる[4-3-3]であり、山口や井手口陽介の有用性が高くなる。また中央が堅い相手の守備に対し、サイドから崩しの起点を作る部分で乾貴士がキーマンになりうる。前線の中央は大迫が基本線となるが、相手が疲れてきた状況では杉本健勇や森岡を投入して攻撃の厚みを増やしたい。
ただ、それは得点経過にもよる。ハリルホジッチ監督は親善試合であっても“テストのためのテスト”をしないタイプの指揮官であり、親善試合であっても勝負に関係ない予定調和の選手起用をほとんどしない。だから交替カードもあくまで真剣勝負の前提で必要に応じたものになるはずだ。
今回の内容や結果が今後の選手選考や強化に大きく影響することは間違いないが、あくまで今回のメンバーで本番仕様の勝負にトライして、そこで出た結果をどう評価するかというテーマ設定になってくる。
その中で早い時間帯にセットプレーやミスなどから失点すれば、そこから経験不足に付け入られて大量失点という流れが考えられないわけではない。
しかしながら、親善試合であっても相手を徹底的に研究し、準備して臨む指揮官の流儀、対戦相手が日本をそこまでリスペクトして入らないことを想定すれば、ガップリよつで力の差を見せ付けられて大敗というのは考えにくく、逆にそういう結果になるようであれば、先行きは不安ということになる。
ここで勝利したとしても喜び過ぎるのは危険だが、初めて世界仕様でハリルホジッチ監督の真価が問われる2試合としても注目する価値はある。
(文:河治良幸)
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