数週間前に伝えられたキャプテンの任
台風の影響による大雨の中、両チームの選手たちがピッチに入場してくる。中村俊輔はいつもの最後尾ではなく、仲間たちを引き連れ先頭を歩いていた。コイントスを終え、横浜F・マリノスの中澤佑二主将と健闘を誓い合うと、黄色のキャプテンマークを左腕につけた。
彼のところからゴールが生まれることはなかったが、劣悪なピッチも問題にしないパフォーマンスを見せた。印象的だったのは、何の気負いもなく、ただ純粋にサッカーを楽しんでいるかのような姿だった。
数週間前、名波浩監督は横浜FM戦でキャプテンを任せることを本人に伝えたという。
「前回、アイツは『平常心、平常心』と言って、最終的にエンジンがかかった時には3回連続くらいボールをロストしたり、消化不良のまま試合が終わってしまった。このゲームに対する責任というのをもっともっと持つという意味でも、(キャプテンマークを)巻くことは決して悪いことじゃないと思う」
日産スタジアムでの一戦を踏まえ、指揮官は今節限定でリーダーに指名することを決意。また、普段ゲーム主将を務める大井健太郎もその意図を汲み、腕章を託している。
「僕自身、キャプテンマークを巻くことでの誇りや責任をしっかり持ってやっているけど、巻いていなくても同じようなことができれば。例えば、これで僕がキャプテンマークをめっちゃ巻きたいとか、巻かないとパワーが出ないというのなら別だけど。名波さんは僕がそういうタイプじゃないと知っているし、巻かなくてもちゃんとできるだろうと信頼されていると捉えている」
試合後、10番は「キャプテンマークをつけさせてもらったり、名波さんはじめチームメイトにも敬意を払ってもらった。勝つことはもちろん、プレーで何かできないかなと思っていた」と振り返った。
明治安田生命J1リーグ第31節、ジュビロ磐田は横浜FMをエコパスタジアムに迎えている。雨だけでなく強風にも晒された両チームのイレブンはこの日、1点差のゲームを演じ、最終的に磐田が2-1と逆転勝利を収めた。順位は6位から変動しなかったが、3位の柏レイソルとの勝ち点差を『3』に縮めた。