ローマの柔軟な組織守備。強さの源泉は“ゼーマン流”の再解釈
ボールが保持できなくなったことに困ったコンテ監督は56分、ウィリアンを投入しエデン・アザールとの2シャドーで劣勢を覆そうとした。だがそのためペドロをウイングから右アウトサイドに回した采配は、完全に悪手となった。
その5分後、守備力の低下したこのサイドにコラロフがオーバーラップを掛け、スペースを捻出したところにディエゴ・ペロッティがドリブルで中へと切り込み、そしてシュート。ゴールに突き刺さり、駄目押しの1点となった。
さらにローマは、最終的にチェルシーに1点も許さず勝利。それにしても見事だったのは、守備ラインの高さを柔軟に切り替えた組織守備だ。思い切り高く上げ、アルバロ・モラタをオフサイドトラップに絡め取ったかと思えば、両ウイングがしっかり下がってゴール前を固めることもいとわなかった。
時間帯や局面による守備の使い分けはコンテの真骨頂なはずだが、そのお株を奪った。実はこれこそが今のローマの強みで、攻撃的なシステムを組みながらリーグでは現在最少失点だ。今回の試合でも前半、チェルシーが猛攻を仕掛けながらシュートがことごとくGKの正面に行ったのも、タイトな組織守備でスペースを潰し、コースを限定していたからだとも言える。
ディ・フランチェスコはかつてローマの選手として、超攻撃的なサッカーを志向するズデネク・ゼーマン監督のもとで主力となっていた。その後監督となり、4-3-3のシステムにウイングの走らせ方、プレスなど多くのアイディアを師匠から引き継いだが、そこに守備を加味しているのが独自のやり方だ。
守備的なセリエAでは異端とさえ言われた伝説のサッカーを再解釈し、現代のCLに持ち込む。チェルシー相手にサプライズを起こしたのは、そんなサッカーだった。
(取材・文:神尾光臣【イタリア】)
【了】