自国開催、予選免除となることのメリット
人柄のよさがにじみ出た所信表明だった。真面目で、気配りができて、人の苦労を知ることもできる男。56年ぶりとなる自国開催の五輪で、注目度が高いサッカーの男子代表チームを率いることを決断した森保一監督の注目の第一声は、意外なところへ向けられていた。
「これから私とともに戦ってくれる選手たちは、グラスルーツの頃から多くの指導者の方々、関係者の方々に育てられてきています。これまでの努力が花咲くように、経験を積んでもらうことでさらに選手たちが伸びて皆さんに喜んでいただけるように、結果を求めながら成長の助けになれるような仕事をしたいと思っております」
東京五輪の出場資格は1997年1月1日以降に生まれた、現時点で20歳以下の選手たちとなる。ホープたちがサッカーを始めたころから携わってきた、すべての人間の夢や情熱を引き継ぐ。やりがいと同時にプレッシャーを背中に感じていかのか、表情を引き締めながら決意を発信した。
日本サッカー協会(JFA)の技術委員会から東京五輪男子代表監督として推挙された森保氏が、JFAの月例理事会で承認されたのが10月12日。知識や見聞を広めるために、先月下旬から欧州を視察行脚していた関係で、決定から18日目にして就任会見に臨んだ森保監督がいよいよ始動する。
まずは12月上旬にタイで開催される、23歳以下の代表チームによる国際親善大会が初陣となる。そして、来年1月に中国で開催されるAFC・U-23アジア選手権で初めてとなる公式戦を戦うが、その先で照準を据えるのは、実質的には2020年7月開幕の東京五輪本番となる。
大会に臨むのは16ヶ国で、現時点で決まっているのは開催国の日本だけだ。ワールドカップとは対照的に予選の開催方法も大陸ごとで異なり、すべてが出そろうのはおそらく五輪イヤーの春になる。
厳しい戦いとなるのは必至のアジア予選を経て、選手たちが身心ともに成長する。リオデジャネイロ五輪代表チームをはじめとして、これまでと同じ青写真を描けないことはハンデになるのではないか。自国で開催されるがゆえに背負う宿命を、森保監督は逆に生かしたいと力を込めた。
「真剣勝負のなかで勝つことでチームが結束する、あるいは自信をもって選手やチームがステップアップしていくこともあると思いますが、予選がないということは全体的な底上げをしながら、じっくりとチーム作りができるメリットがあると思っています」