本田を右サイドで起用する意味。メキシコで新境地に達するか
右ウィングは元々ウルグアイ代表のホナタン・ウレタビスカヤが定位置としていたポジションであり、彼の縦の突破からのクロスやドリブルでゴールに向かうプレーというのがパチューカの攻撃における明確なアクセントになっていた。ここ数試合は右利きのウレタビスカヤが左に回り、左利きの本田が右ウィングで継続的に起用されることで、これまでと異なるチャンスが生まれるようになっている。
メキシコリーグは世界的に見ても中盤のポゼッションを重視するリーグだが、左右のウィングやサイドハーフはボールを持ったら縦に仕掛けてクロスやシュートに持ち込むタイプの選手が起用されやすい。本田も加入当初はインサイドハーフあるいは3トップの中央で“偽9番”的な役割を期待される向きがあったが、ここに来て右ウィング起用がメインになりつつある。
パチューカのディエゴ・アロンソ監督はウルグアイ人だがスペインで長い選手生活を過ごし、指導者としてもバルセロナの攻撃スタイルを1つの模範として[4-3-3]をベースとしたスタイルを構築している。本田には契約前の段階でパチューカが縦突破からクロス一辺倒ではなく、ボールをつないでコンビネーションを駆使するスタイルであることを伝えたそうだが、右サイドでの起用はその方向性をさらに進めることにもなりうる。
今回のサントス戦でもゴールシーンの他にグスマンやハラが右に流れ、本田がタイミングを見て中に入ってチャンスメークするシーンが見られた。そうしたチームの狙いが明確にあり、その中で本田の持ち味がサイドでも発揮されていることは間違いないだろう。
本田としてはインサイドでのプレーが理想にあるはずだが、現在のチームの方向性と周囲の選手の共有があれば、ミランや日本代表で担ってきた右サイドでも十分に活躍できる。そんな新たな境地に達しつつあるかもしれない。
(文:河治良幸)
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