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ほぼ完璧、だが未完成のような恐ろしさ。万能型FWケイン、生き残り戦略で培った演算能力【西部の目】

歴代の名ストライカーとの類似性を指摘されるトッテナムのハリー・ケイン。イングランド代表でもキャプテンを務めた長身FWだが、幼いころは今と違って体格に恵まれていなかったという。スパーズの万能型ストライカーは何が優れているのか。ほぼ完璧なセンターフォワードを生み出したそのルーツこそが、その強みを物語っている。(文:西部謙司)

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

誰かに似ているが誰にも似ていない

トッテナムのFWハリー・ケイン。歴代のさまざまな名ストライカーに似ていると言われる
トッテナムのFWハリー・ケイン。歴代のさまざまな名ストライカーに似ていると言われる【写真:Getty Images】

「彼を見ているとアラン・シアラーを思い出す」

 ガリー・リネカーはそう言っている。そうかと思えば、かつてスパーズでプレーしたドイツ人FWユルゲン・クリンスマンとの類似性を指摘する人もいる。他にもルート・ファン・ニステルローイ、ウェイン・ルーニー、テディ・シェリンガムなど、多くの名ストライカーたちが引き合いに出されている。まあ、だいたい同じ系統とはいえるが違うといえばかなり違う。

 歴代のさまざまなゴールゲッターに似ていると言われているのはハリー・ケインだ。ついでに言ってしまえば、筆者はマルコ・ファン・バステンにも似ていると思う。

 トッテナム・ホットスパー所属の24歳、身長188センチ、体重65キロ……65キロ? いつのデータかわからないが、現在の本人を見るかぎり65キロということはないだろう。ただそう書いてあるのだから65キロだったときもあったに違いない。長身で細身、そして万能型のFWである。

 ケインを知る人々が共通して証言しているのは「向上心」だ。努力を怠らず、自分で自分を成長させてきたという。その過程では、きっと誰かによく似ていたのだろう。

 しかし、時を経過するとまた違う誰かに似ていると言われる。ケインが自分を進化させてきたからだ。そして、もう誰かに似ているとは言われなくなった。誰かがケインに似ていると言われるようになるだけだ。

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