誰かに似ているが誰にも似ていない
「彼を見ているとアラン・シアラーを思い出す」
ガリー・リネカーはそう言っている。そうかと思えば、かつてスパーズでプレーしたドイツ人FWユルゲン・クリンスマンとの類似性を指摘する人もいる。他にもルート・ファン・ニステルローイ、ウェイン・ルーニー、テディ・シェリンガムなど、多くの名ストライカーたちが引き合いに出されている。まあ、だいたい同じ系統とはいえるが違うといえばかなり違う。
歴代のさまざまなゴールゲッターに似ていると言われているのはハリー・ケインだ。ついでに言ってしまえば、筆者はマルコ・ファン・バステンにも似ていると思う。
トッテナム・ホットスパー所属の24歳、身長188センチ、体重65キロ……65キロ? いつのデータかわからないが、現在の本人を見るかぎり65キロということはないだろう。ただそう書いてあるのだから65キロだったときもあったに違いない。長身で細身、そして万能型のFWである。
ケインを知る人々が共通して証言しているのは「向上心」だ。努力を怠らず、自分で自分を成長させてきたという。その過程では、きっと誰かによく似ていたのだろう。
しかし、時を経過するとまた違う誰かに似ていると言われる。ケインが自分を進化させてきたからだ。そして、もう誰かに似ているとは言われなくなった。誰かがケインに似ていると言われるようになるだけだ。
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