プレミア勢が過密日程の中で決勝トーナメントを迎える現実
ユナイテッドが後半ロスタイムに得た決勝点は、18歳の相手GKが、マーカス・ラッシュフォードのFKを捕球してゴールラインを超えたミスによるものだった。
しかし、直前のリーグ戦でリバプールとスコアレスドローに終わった際とは違い、エンターテイメント性の乏しさよりも堅実性の高さを指摘する意見が多かった。
CLでは、シティと同じく1失点のみの3戦3勝。欧州での勝ち上がり方を知るジョゼ・モウリーニョ采配が、抽選にも恵まれたグループからの首位通過へとチームを着実に導いていると理解されている。
その一方で、「本格的なCLの始まり」とも言われる決勝トーナメントは甘くないとの認識も母国民は持っている。プレミア勢が過密日程の中で決勝トーナメントを迎える現実は、嫌というほど理解している。
欧州大陸のライバル勢が休養を取るクリスマスから年始にかけては、プレミアとFAカップの超過密時期。全体的な競争性が高いプレミアを全力で戦い続ける主力選手には、疲労蓄積と故障の不安が増す。
監督陣が必要性を訴えるウィンターブレイクが今季のプレミアで導入されていたとすれば、巷では今頃、「今季はCLでの復活元年だ」とする声が盛んに上がっているような気もする。
但し、国内でも開幕から無敗で、計32得点4失点のリーグ首位で9節を終えているシティが、実際に欧州での機運も高めてくれるかもしれない。シティは、CLとの二足の草鞋を履くための選手層もプレミア随一。
不安視された最終ライン中央では、昨季まではポカが目立った若いジョン・ストーンズが、先の3節ナポリ戦で値千金のシュートブロックで母国記者陣を微笑ませてもいる。
同節後のトッテナムは「レアルとも互角に戦える」と認められたが、シティは「レアルと同等に優勝を狙える」とまで言われ始めたほどだ。
シティが11月1日にナポリに乗り込む4節でも結果を出せば、国内では、少なくともプレミアが再び優勝の有力候補を輩出する時が来たとのムードが高まっても不思議ではない。
10月末で夏時間も終わるイングランドの冬は長く、厳しい。だが今季CLでは、プレミア勢にとっての数年来の冬に、ファイナリスト出現という雪解けが訪れることを期待したい。
(文:山中忍【イングランド】)
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