ドリブルは疲れる。それでもとことんドリブルにこだわってほしい
選手経験のある方は分かると思いますが、ドリブルすることやボールを持つことは疲れます。だからこそ、ドリブルをするよりもパスをした方が疲れないのではないか、という考え方があり、私たちはよく批判されます。
しかし、疲れないからパスをする、疲れないからドリブルをしない、という考え方では行き詰まる場面にでくわします。
「ボールは汗をかかない」。そんなふうに昔からよく言われてきました。しかし汗をかかないことが良いのでしょうか。
パスありきのサッカーを志向しているチームが、相手にブロックを作られてしまい、なかなかブロック内部に進入できずに、ブロックの外側だけをなぞるようにボールを回していく局面しか作れず、あとはクロスボールを放り込むしか攻め手が無くなってしまう試合がよくあります。
パスの方が簡単な選択肢だからといってパスばかりをしていると、相手の守備は予測がしやすいですから、なかなか打開ができません。
私たちは、引いてブロックを作ってくるチームというのは、ボールを持つための時間を敢えて与えてくれているのだと考えるようにしています。ブロックを作って対抗してくるチームを相手にすると、自分たちがやってきたことを存分見せられるときがきた! と思います。
2009年までのチームはその手のチームに苦しみました。しかし、自分たちが矜持とするドリブルを先鋭化させ、より狭いエリアにドリブルで切り込んでいくことを怖がらなくなったとき、私たちは全国の舞台に立つことができました。私たちにはそういう成功体験があります。
ドリブルは疲れますし、パスの方が効率的なのである意味で「楽な選択」かもしれません。しかし、攻撃陣にとっての「楽な選択」は相手守備陣にとっても「予想しやすい選択」になりえるのです。相手にスペースを消されていてもドリブルで打開できれば、相手守備陣にとって脅威となるのです。そもそもサッカーは1対1の連続です。人を抜く1対1こそがサッカーの醍醐味なのですから、ぜひドリブルで相手を抜いていくことにはこだわってほしいものです。
(文:加見成司)
【了】