「ここからだよ。やってやりますよ」(高木琢也監督)
ジャパネットデーと銘打たれた10月に行なわれたJ2第38節で、長崎は結果こそドローながら圧倒的戦力を誇る名古屋相手に優勢に戦いを進め、今季最多12,923人の入場者の前で実力をアピールすることに成功した。
4月にジャパネットホールディングスという強固な経営母体に支えられ、高田明という希代のカリスマ経営者を社長に迎えたことで、今の長崎には良い風が吹いている。
だがどれだけ風が吹こうとも、その風を受ける帆がなければ船は進まないように、ジャパネットがどれだけ風を送り込んだとしても、現場に受ける力がなければJ1昇格の可能性は広がらなかったはずだ。
「まだ何も終わっていないけど、よくここまで来たと思うよ……」。先日、高木監督は波乱の中で始まった今季を振り返り、少し感慨深げに呟いた。それは全てを賭けてチームを守ってきた指揮官の素直な呟きだったろう。
だが次の瞬間、「でもね、残り試合……まだ俺は上げていくよ。選手にもそう言った。ここからだよ。やってやりますよ」と力強く言葉を続けた。
残り少ないリーグ戦、チーム内には上位の驕りも、不安へのプレッシャーも感じられない。トレーニングではいつものように、高木監督の指示の声が飛び、コーチ陣が小走りで次のトレーニングの準備を進め、選手たちはこの時期にこの順位で戦えることに充実感を覚えている。気負う空気はどこにもない。
「ゼイワン(J1)へ行こう!」高田明社長の声に応えるように、今、チームは笑顔で戦えている。それもまたシーズン前には誰にも信じてもらえないことだろう。
(取材・文:藤原裕久)
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