ドイツの地で学んだ、生き抜いていくための術
左ひざのじん帯を損傷した影響もあって、1部の舞台では11試合の出場にとどまった。それでも、日々の練習を含めて、屈強で大柄な大男たちが集うドイツの地で、小柄な自分が生き抜いていくために必要な術を学び取った。
「僕は背が低いですけど、重心が低いことが逆にストロングポイントだと思っているので。キュッ、キュッといったアジリティーみたいな部分があるので、そこを出していくことが相手にとっても嫌なことなのかなと思っています」
簡単には倒れないから、相手のプレッシャーも必要以上に激しくなる。縦パスを受けてからターンして、強引に縦への突破を図って相手のファウルを誘った瞬間に小さくガッツポーズを作った前半終了間際のプレーは、長澤の真骨頂と言っていい。
そして、このときの残像がガンバの守備陣の脳裏に焼きついていたからか。後半19分に生まれたMFラファエル・シルバのこの試合2ゴール目は、相手が間合いを詰めてこないと判断した長澤が放ったパスから生まれていた。
ゴール正面から見て左側、ペナルティーエリアの外からカーブの軌道を描かせ、ゴール右隅を射抜いた鮮やかなラファエル・シルバの一撃を巻き戻していく。すると、ハリルジャパン経験者でもあるガンバのセンターバック、三浦弦太の激しいチャージを食らった長澤が、ボールを失った場面にたどり着く。
もっとも、長澤をフォローしていった右サイドバックの遠藤航が、ガンバの縦パスをカット。この瞬間、長澤の脳裏には“ある映像”が閃いた。
「航がボールをもったときに、もう一回ボールが来る、という感じがしたのですぐに起き上がって、上手く前を向けたら、ラファが左サイドでフリーだったので。あそこから右へ切れ込んでいって、シュートを決める能力を彼はもっているので、簡単にボールを預けました」
遠藤のパスを受けて反転し、ゴール中央へボールをもち運んだ直後だった。目の前に若干ながら空いていたスペースを自ら突くよりも、日々の練習を通してストロングポイントを知り尽くしている、ラファエル・シルバの一発にかけた。
長澤のフィジカルコンタクトの強さを感じていたからか。三浦をはじめとするガンバの守備陣も、あえて寄せてこなかった。瞬時の判断は吉と出て、長澤がアシストをマークした。