ポゼッションと得点に関する間違った期待
風間八宏監督のサッカーは「ポゼッション・サッカー」と呼ばれる。確かによくパスはつながっているし、ポゼッション率も非常に高い。率いた川崎フロンターレ、名古屋グランパスで変わらない特徴だ。しかし風間監督本人は、「ポゼッションなんて、あんまり言ったこともない」という。
日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「ポゼッションはそれだけでは何の意味もない」と話していたが、ポゼッション率はボールをどれだけ保持していたかの数値にすぎず、それが勝敗に直結しないのはコアなサッカーファンなら実感しているに違いない。
ポゼッションが高いと自然に守備が崩れてゴールを奪えるわけではないのだ。得点するにはチャンスを作る、チャンスを決めるというポゼッションとは別の能力が必要で、パスワークでボールを運んでいくのはその前段階にすぎない。
日本サッカーにある種のポゼッション信仰があるのは、バルセロナの影響が無視できないと思う。ペップ・グァルディオラ監督が率いたバルサは70%のポゼッションでゴールを量産したモンスター・チームだった。
バルサの影響は日本にかぎらず、欧州トップクラブでも模倣したところは少なくない。だいたいポゼッション自体はすぐに上がる。しかし、それが思ったほど得点には結びつかない。
パスの本数が増えればミスの確率も上がるので、そのうちにカウンターを食らって負けてしまう。自分のチームにメッシがいないと気づいた時点で、バルサになれないと悟りポゼッションを捨てることになる。
ポゼッションして点が入らないのはポゼッションが悪い、そう勘違いしてしまったわけだ。ポゼッションすれば半ば自動的に点が入るという間違った期待をしていたのだろう。