次節は大一番。無類の強さを誇るホームに首位・鹿島を迎える
チーム名に「北海道」を加えて2年目。まさに道全体で盛り上がりを見せるなかで、これまでに一度だけJ1残留を果たした、2001シーズンの勝ち点34にFC東京戦であげた勝利で並んだ。
当時とはチーム数も異なり、延長戦やPK戦まであった関係で勝ち点の算出方法も異なるが、それでも16年ぶりとなる残留に王手をかけた。残り4試合で、降格圏の16位・サンフレッチェとの勝ち点差は7ポイント。次節でコンサドーレが勝ち、サンフレッチェが負ければ悲願を成就できる。
「札幌という都市の規模から考えれば、J1で戦い続けなければいけないクラブのひとつだと思っているので、新たな歴史を作るというより、歴史を作れるスタートを今年切れればいいかなと」
ジェイの2ゴールをともにアシストしたFW都倉賢が、チーム全体の思いを代弁する。胸中をシンクロさせる一人である稲本も、これまで募らせてきた熱い思いをピッチに還元したいと誓う。
「J1残留という目標に向かって、しっかり自分の力をチームに還元したい。1年と3ヶ月、ほぼ何もやっていなかったので、ファンとサポーター、そしてチームのみんなへの感謝の気持ちを込めてプレーしたい」
同点のピンチを救った、名づけるならば「The Cut」とでも言うべきプレーだけでなく、4分間を数えたアディショナルタイムを含めて、稲本は何度もパスのインターセプトにトライ。15年前のベルギー戦のゴールを生み出した、前へ、前へとチームを推進させる力強さを具現化させた。
試合終了直前には途中出場のFWリッピ・ヴェローゾをセンターサークル付近で吹っ飛ばし、豪快なボール奪取からカウンターの起点にもなった。復帰3戦目で最長となる15分間のプレーには、引き気味になりがちな時間帯で、チームに勇気とエネルギーを与える意図が込められていた。
「あとは、あわよくば自分が点を取りたいというのもあって」
悪戯小僧のような笑顔も浮かべた稲本だが、残留を決めたときには、アウェイ初勝利を手繰り寄せたFC東京戦でのパスカットは、コンサドーレの歴史で長く語り継がれていくかもしれない。
「まあまあ、そこは上手くそう書いてください」
照れ臭そうに笑ったレジェンドは次の瞬間、8勝4分け3敗、20得点に対して14失点と無類の強さを誇るホームに、首位・鹿島アントラーズを迎える次節の大一番を早くもにらんでいた。
(取材・文:藤江直人)
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