長友の貢献。コーチングスタッフの個人指導が生んだ安定
そして左SBとしてフル出場し、カジェホンを抑えるために走りまくった長友の貢献も、決して小さいものではなかった。
かつて「裏を取らせたら世界一上手い」と長友自身が評したスペイン人FWは現在絶好調。昨シーズンの対決では、左クロスに対する甘いボール処理を背後から奪われ、ゴールを決められた苦い経験がある。しかし今度は、カジェホンを視野から逃すことなく、高い集中力を保って守備をした。
ボールを持っていないところでの駆け引きは実に熾烈だ。カジェホンがマークを外すべくダッシュを掛ければ、それに必ず付いてくる。「裏を取られない間合いと間隔を、常に95分間意識しながらやった」とは長友の弁。
そしてカジェホンをめがけてミドルパスが出されれば、サイドから中央へ絞って相手の前に身を入れ、ヘッドでクリア。そんなプレーを度々続け、ミランダがサイドに張り出せばポジションを入れ替え、クロスを掻き出すというプレーもした。味方がヒサイのカバーに遅れ、数的不利を作られない限りはカジェホンの対処に成功。ヒサイやアランがスペースに出てきても、落ち着いて1対1で止めていた。
これまで長友は、逆サイドからのクロスなどで裏を狙われた際の守備に不安定さをさらした。しかし今季、見違えるように安定し集中した処理ができている。7月の合宿合流初日、スパレッティ監督以下コーチングスタッフは、ハイボールに対する視野の取り方やポジショニングなどを細かく個人指導するところから入っていた。そうした練習の積み重ねがあって、今の安定につながっているのだ。
攻撃に回った際ミスパスが出て、せっかくのカウンターのチャンスを生かせなかったところは今後への課題か。ただ練習で培ったことを確実に出し、首位攻防戦で集中力の高い守備を披露できたことは、スパレッティ監督からの信頼をより強固なものにすることだろう。
(取材・文:神尾光臣【イタリア】)
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