「香川ーヤルモレンコ」を軸に
こうしたチーム状況で迎える試合が21日のブンデスリーガ第9節、アイントラハト・フランクフルト戦である。就任3季目となるニコ・コバチ監督が率いるクラブは現在2連勝中。長谷部誠をリベロに据える3バックは今季も健在だ。日本代表MFは攻守における重要な舵取り役となっている。今夏にはDFイェトロ・ヴィレムス、MFケヴィン=プリンス・ボアテング、FWアンテ・レビッチ、FWセバスティアン・ハラーといった屈強なフィジカルの選手たちを補強。攻守の切り替えに淀みのない堅実なチームを実現している。
そんなリーグで3番目に失点数の少ないフランクフルトだが、もちろん隙がないわけではない。3バックの統率がわずかに乱れ、中央のCBと左CBの間にスペースが生じることがある。前節のハノーファー96戦では42分、このスペースをマルティン・ハルニクに突かれ、あわや失点というシュートを打たれている。第2節のVfLボルフスブルク戦や第6節のRBライプツィヒ戦では、右サイドからボールを入れられてスペースを突かれ、失点している。このようにフランクフルトに対しては、右サイドからの攻略がある程度有効のようだ。
そこで推奨したいのが、香川の“右”インサイドハーフ起用。APOEL戦では“左”インサイドハーフで起用された背番号23だが、試合中にはポジションを移し、右ウイングのアンドリー・ヤルモレンコとコンビネーションを見せている。くどいようだが、自由が裏目に出て攻撃が雑然とし、結果に結び付いていない今のドルトムントにあって、コンビらしいコンビは香川=ヤルモレンコくらいのものだ。確かにマリオ・ゲッツェやゴンサロ・カストロの状態は良いかもしれないが、アタッキングサードで行き場を見失っているところもある。もちろん日本代表とウクライナ代表の連係ばかりに頼ってもいられないのだが、チームそのものが停滞しつつある今、ボス監督が嗜好する持ち味を取り戻すための“軸”は必要となるだろう。APOEL戦では今季初のフル出場を飾った香川。どんどん状態を上げて、ヤルモレンコだけでなく周囲とのコンビネーションを構築し、チームを再び輝かせたい。
コバチ監督のサッカーが洗練されつつあるフランクフルトは、決して簡単な相手ではない。それでもトッテナムやレアル・マドリード、RBライプツィヒといったCL出場チームとの相対的な力関係を考えれば、勝利は不可能ではないだろう。このタイミングで“自分たちのサッカー”を整理し直し、連敗を止め、是非とも勝ち点3を持って帰りたいところだ。
(取材・文:本田千尋)
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