鹿島優勝の瞬間が近づくたびに生じる悩み
金崎はいま現在も、日本代表への復帰を果たしていない。代表候補の一人には名前を連ねているが、指揮官は金崎との二者択一の形から、FW杉本健勇(セレッソ大阪)を大迫勇也(ケルン)に次ぐ1トップ枠で招集している。
大迫のポストプレーの上手さは、アントラーズのコーチ時代から何度も間近で見てきた。ハリルジャパンで代役の利かない存在になったと思うからこそ、リスクマネジメントにも言及する。
「そういう点で(大迫の代役として)杉本を呼んでいるはずなんですけど。ただ、そうではない形も作っておいたほうがいいし、その意味ではサイドに流れるプレーを得意とする夢生のような選手も呼んでおいてほしいと思うんですよね」
金崎の長所はもうひとつある。キックオフ直後から、相手のセンターバックと肉弾戦を繰り広げられるメンタルの強さだ。ハリルジャパンにも選出された三浦弦太を流血させた9月23日のガンバ大阪戦を、石井氏も自身のシーズンシートで目の当たりにしている。
「夢生がいると相手のセンターバックはかなり疲れます。後半にアントラーズが点を取れるのは、夢生に体力を使われることが理由のひとつだと思うし、(鈴木)優磨たちも生きてくるんじゃないかなと」
指摘通りに、ガンバ戦は後半アディショナルタイムに飛び出した、日本代表DF植田直通の劇的な決勝弾で勝利した。コーチから昇格する形でバトンを引き継いだ大岩剛新監督のもとで、鮮やかなV字回復を果たしたアントラーズは首位を快走している。
残り5試合で2位のフロンターレとの勝ち点差は5ポイント。連覇を達成する瞬間が近づいてくるたびに、石井氏はある悩みを抱えるようになった。
「優勝がかかってきた、となったときに私が観戦に行ったほうがいいのかどうか。行くと周囲が盛り上がったりする可能性があるので、そのへんでちょっと迷っているんですけど」
今後は来月5日にレッズ、同26日に柏レイソルをカシマサッカースタジアムに迎える。解任された前監督にもしもスポットライトがあたってしまえば、大岩監督や選手たちに頑張りがスポイルされてしまうのでは、と危惧しているのだろう。
次なる挑戦へ向けて充電しながら、金崎へのエールも含めて、26年もの時間を捧げてきたアントラーズへいまも熱い視線を注ぐ。石井氏が誰からも愛された理由が、こんな姿勢にも凝縮されている。
(取材・文:藤江直人)
(インタビュー全文は『フットボール批評issue18』にてお楽しみください)
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