金崎騒動が日本代表にまで影響するとは想定外だった
約1年10ヶ月で幕を閉じた、波瀾万丈に富んだアントラーズでの監督の日々。実は石井氏の胸中に、いまでも「責任を感じている」と刻まれている出来事がある。
湘南ベルマーレをカシマサッカースタジアムに迎えた、昨年8月20日のセカンドステージ第9節。後半25分に交代を命じられたFW金崎夢生が石井氏との握手を拒否し、反抗的な態度を取った。
石井氏と金崎がお互いに詰め寄るなど、一触即発の雰囲気が漂ったシーンはスカパー!でも中継される。それを見た日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、5日後に行われた代表メンバー発表の席で、おもむろに金崎を代表から外したと明言した。
「ここでひとつ言わなければならないことがある。金崎夢生のことだ。招集リストに入っていたが、日本代表候補の選手があのような態度を取ってはいけない。これは全選手に伝えたいと思うが、このような行動をとるとA代表には入れない」
騒動の余波が日本代表にまで伝播することは、石井氏にとっても想定外だったという。
「テレビカメラが入っているとわかっていたのに、一瞬でも感情的になった点で、あの場面では私の判断が悪かった。夢生がよくないと判断しての交代だっただけに、余計に彼に対して『その態度は何だ』と反応してしまった。試合後にロッカールームで対応すれば、問題はなかったわけですから」
ベルマーレ戦では交代を命じられた時点で、スコアは0‐0だった。エースストライカーとしてチームを勝たせたい、という熱い思いが先走るあまりに、反抗的な態度として出てしまったことは十分に理解できると石井氏は振り返る。
「選手がそのような感情をもつことはまったく問題ないと考えていますけど、ああいう態度をベンチ前で、あのタイミングで見せるのは当然ダメです。夢生とは翌日に話し合いの場をもって、私の考え方をしっかりと伝えました。
私は許すけど、他のチームの監督ならばわからないと言いましたし、夢生も納得してくれました。ただ、テレビで映されたことであのような騒ぎになり、夢生が代表に呼ばれなくなったことに対しては、逆に責任を感じています」