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新しいC・ロナウド。“過剰”から洗練へ。肉体的なピーク越え、研ぎ澄まされる決定力【西部の目】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

過剰から洗練へ。シンプルなゴールが増加

ロナウドはゴールゲッターとしての役割に集中し始めている
ロナウドはゴールゲッターとしての役割に集中し始めている【写真:Getty Images】

 アルフレード・ディステファノはサッカー史上最大級のスーパースターで、レアル・マドリーのレジェンドである。アルゼンチン人のディステファノが来てから、レアルは今日のレアルになった。

 プレーメーカーでありゴールゲッターだったディステファノは最高の“ファルソ・ヌエベ”であり、その点でメッシはディステファノの後継者である。母国よりもスペインで名声を築いたところも似ている。

 しかし一方で、ディステファノはロナウドのモデルともいえる。ボビー・チャールトンが「史上最も頭のいいプレーヤー」と舌を巻いたディステファノだが、リーベルプレートでの若手時代は快足のウイングとして鳴らし、頭脳派というより肉体派だった。リーベルには元祖ファルソ・ヌエベの“マエストロ”、アドルフォ・ペデルネーラが君臨していて、ディステファノは“ラ・マキナ”と呼ばれた最強アタックラインに弾き出され他クラブへ貸し出されていた。

 リーベルへ戻ってペデルネーラからポジションを奪いとり、コロンビアのミリョナリオスを経てレアルへ渡るころにはすっかり洗練された“ドン・アルフレード”になっていたが、もともとはそういうタイプではなかったのだ。

 ロナウドとディステファノは努力で道を切り拓いている。プレースタイルは違うけれども、人並み外れた努力家であり強烈な個性を持っているところは同じだ。確かにどちらも俊足という才能には恵まれていたが、努力で頂点まで上り詰めた。

 ロナウドはおそらく肉体的なピークを越えている。強引さよりも、プレーを整理して洗練させることで新しいロナウドへ変わりつつある。無駄を省き、よりゴールに集中し、決定力を研ぎ澄ます。

 自分1人で決着をつけるよりも、味方のサポートを最大限利用した得点が増えていくはずだ。豪快で派手なゴールよりも、地味な何でもないような得点が増えていくだろう。そして昨季の終盤のように、より決定的で歴史的なゴールを記録するのかもしれない。数よりも価値の高いゴールを決める、それが新しいCR7ではないだろうか。

(文:西部謙司)

【了】

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