ハリルも「モダン」と評した浦和の戦いぶり
そして最後が、チーム全体の守備において「メリハリをつけること」だ。1点のリードで迎えたハーフタイムでのやり取りを、槙野が明かしてくれた。
「もう少し前からボールを奪いにいきたいと前線の選手が言ったときに、バランスを見ていくところはいこうと。特に興梠(慎三)選手に徹底させたのは、前からボールを取りにいきたいという気持ちをしっかりと抑えさせて、スタート位置に対してチーム全体で共通意識をもつことでした。
ウチの場合、60分以降になると体力的に厳しくなるところがあるので。そういうときには、興梠選手のスタート位置を下げようという話をみんなでしていたので、周りの選手との距離感や、最終ラインから興梠選手までの距離感は最後まで非常によかったと思います」
前線の選手が積極果敢にハイプレスを仕掛けたいと意気込んでも、中盤や最終ラインの選手が連動しなければ全体が間延びして、大きなスペースを相手に与えてしまう。試合前とハーフタイムにしっかりと興梠慎三と意思の疎通を図ったことで、ピンチを未然に防ぐことができたと言っていい。
そして、3ヶ条からなる戦いを愚直に貫いたことで、ハリルジャパンが6大会連続6度目のワールドカップ出場を決めた、8月31日のオーストラリア代表戦で見せた、たとえるなら「肉を切らせて骨を断つ」なサッカーを具現化できた。西川が声を弾ませる。
「相手にあえてもたせて、最後のところ、ゴール前でボールを奪ってからのショートカウンターという攻撃が、前半の段階からいけそうな感じがしていました」
だからなのか、視察に訪れていた日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督はご機嫌だった。センターバックに入ったキャプテンの阿部勇樹、右サイドバックの遠藤航、そして槙野が魅せたデュエルの強さを称賛しながら、こんな言葉を残して会場を後にしている。
「守備のハードワークがすごかった。モダンなフットボールだった」