昨シーズンのJリーグCS決勝で刻まれた悔しさが糧に
次はフッキやオスカルが球際の激しい攻防を避け、中盤やボランチの位置まで下がったときは「放置しておく」ということだ。
「彼がボールをもって危険だな、と思ったときには僕がしっかりとマンマークでつきましたけど。彼が僕のことを嫌がって、ゴールから遠ざけるポジションでボールを受けるということに関しては、僕たちとしてはまったく怖さは感じなかったので。そのあたりは臨機応変に対応していました」
こう語る槙野は最初に訪れた前半17分の1対1で、フッキを吹き飛ばしている。前半終了間際にフッキへのチャージがラフプレーと見なされ、イエローカードをもらっても、前へ出る際の強さやアグレッシブさが失われることはなかった。
フッキやオスカルが肉弾戦を回避して下がっていく姿を見ながら、西川は昨シーズンのJリーグチャンピオンシップ決勝で刻まれた悔しさを脳裏に蘇らせていた。
「あのときの経験が、今日の試合で生きたんじゃないかなと。一番危険な状況を把握しながらの90分間だったので、チャンピオンシップは決して無駄じゃなかったと思っています」
鹿島アントラーズと対峙した昨シーズンのJリーグチャンピオンシップ。敵地カシマサッカースタジアムでの第1戦を1‐0で制しながら、埼玉スタジアムに舞台を移した第2戦で1‐2の逆転負けを喫し、アウェイゴールの差で天国から地獄へと突き落とされた。
第2戦の流れを変えたのは、前半40分に執念のダイビングヘッドで同点とした金崎夢生。相手のエースストライカーに大仕事をさせ、アントラーズ全体を乗せてしまったことで、後半34分に献上したPKを再び金崎に決められてしまった。
だからこそフッキやオスカル、エウケソンに仕事をさせない、西川の言葉を借りれば「一番危険な状況を把握しながらの」試合運びが求められた。槙野を中心にミッションをほぼ完遂できたからこそ、前半12分にMFラファエル・シルバが決めた千金の一発を死守できた。