「あれが森山ジャパン」。大一番で見せた日本の底力
日本がゴール前を死守する姿は、まるで対戦相手と同じものを見ているようだった。イングランドは攻撃が自陣まで迫ってくると、最終ラインの4人がペナルティエリアの幅まで絞り、シュートを打つスペースすら与えない守備陣形を敷く。「ゴールを守る」というサッカーの守備の原則に忠実で基本的なプレーだが、グループステージも含めて見ていると、これがまた強固だった。そしてそれは日本にも乗り移る。
菅原は「あれが森山ジャパンです」と笑顔を見せる。どんな時も戦う姿勢を見せることこそ、森山佳郎監督が2年半をかけて教え込んできた、チームのベースとなる部分だった。主将の福岡慎平も「(森山監督からは)ファイティングスピリットを学びました。泥臭く勝つとか、球際で戦う部分です」と話す。まさに積み上げてきたものが集大成として発揮された。
森山監督が最初に現U-17代表につながるチームの指揮を執ったのは2015年4月のU-15日本代表のインドネシア遠征だった。当時から現在までの約2年半、福岡、久保、菅原をはじめ、鈴木冬一、宮代大聖、喜田陽、谷晃生、棚橋尭士といった選手たちが中心としてチームに残り続けている。
その遠征でU-15インドネシア代表に1-2で敗れたところからのスタート。森山監督曰く「とにかくユニフォームをドロドロにして走って戦って、というベースの部分がちょっと忘れかけていた」ところから戦う姿勢を見直してきたが、「僕もプレーの質とか、コンビネーションとか、そういう方向に、主導権握ってやろうという方向にちょっとフォーカスして、走る、戦うという部分がおざなりになっていた」とW杯期間中に改めて気づかされた。それがグループステージ第3戦のニューカレドニア戦(1-1のドロー)である。
「ニューカレドニアの意地でも勝ち点1を取ってやろうという気持ちだとか、そういう根本のところか、僕たちの原点を思い出させてくれたというか、本当にそういう、相手よりも走る、相手よりも戦う、相手よりも球際で負けないという、本当に根本のところをニューカレドニアがしっかり教えてくれて、そこからチームがうまくまとまって、守備もできた」(菅原)
痛恨のドローが、もともと一体感に定評のあったチームの団結を一層深めた。個人の差を組織力で埋める…チームが本来の強さを取り戻した。