中村憲剛から引き継いだキャプテンの座
浦和レッズに逆転負けしたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の準々決勝第2戦、そしてベガルタとのYBCルヴァンカップ準決勝第2戦でも、フロンターレは退場者を出している。
もっとも、いずれも2戦合計でリードしていたこともあって、フォーメーションは「4‐4‐1」にした。翻って、この日はリードを許している。前線から積極的にプレスをかけられるように2トップに変えて、ボランチを3枚にして野津田らが侵入してくるスペースをも消した。
プレスの「一の矢」を担う小林にかかる負担は、必然的にさらに増える。しかし、2点目を失い、天を仰いだのも一瞬だけ。愚直かつ効率的な“走り”に導かれた攻撃が、ベガルタを追い詰めていく。この試合で史上17人目となるJ1通算400試合出場を達成した、大黒柱のMF中村憲剛が言う。
「(ベガルタは)もともと最終ラインと中盤の間が空くので、そこを3点とも上手く使えた。ウチらが後ろから全部蹴るのではなく、つなごうとしたのも大きいと思いますけどね。中盤はとにかくみんなでハードワークしたし、サイドバックのエウソンと(車屋)紳太郎も上下動を繰り返した。
一人減ったときの原則というか。みんながちょっとだけ、5メートル、10メートルを頑張って走ることで、数的不利を同数にもっていく作業をするんだけど、やみくもに走るのではなくて、行けるときは行く、というメリハリがあったのかなと。向こうもだんだんつなげなくなってきたので」
まもなく37歳を迎えながら、それでも圧倒的な存在感をピッチで放ち続ける中村から、このオフにキャプテンの座を禅譲された。風間八宏前監督(現名古屋グランパス監督)からバトンを引き継ぎ、ヘッドコーチから昇格した鬼木監督の発案だった。
前人未踏の3年連続得点王を獲得した、FW大久保嘉人(現FC東京)が抜ける新シーズンをどのように戦うか。43歳の新人監督はこんな設計図を描いていた。
「常に100%の状態で練習や試合に臨む、という責任感をいろいろな選手に分散させたかった。(小林)悠自身は昨シーズン、強い責任感をもってプレーしていた。(中村)憲剛の立場で言えば、そういう役職がなくてもやってくれる。その意味では悠と憲剛と、2人のキャプテンがいるようなものなので」