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Jリーグ 7年前

川崎F・小林悠、手繰り寄せた奇跡。見出した独自のキャプテン像、成長が具現化した劇的2ゴール

text by 藤江直人 photo by Getty Images

退場者を出し数的不利、さらに2点のビハインド

 DFエウシーニョが鮮やかなミドルシュートを突き刺したのが後半37分。興奮も冷めやらないまま、わずか5分間で同点、そして逆転に成功する。しかも、フロンターレは前半の段階で退場者を出していた。Jリーグ史上に語り継がれる奇跡を手繰り寄せた、ヒーローの小林が試合後に声を弾ませた。

「エウソン(エウシーニョ)がゴールを決めた瞬間、みんなの気持ちが蘇ったというか、希望がもてたというか。サッカーは点が入ると、一気に局面が変わるので。10人でしたけど、1点を返した後の等々力の雰囲気だったら、もしかしたらという気持ちがありました。

 僕自身も正直、相手のボールを追いかけてばかりで『ああ、きついな』と思っていたし、後半に2点目を取られたときは厳しいな、と思いましたけど……エウソンのゴールで行けるんじゃないかと。2点目も3点目も、とにかく思い切り打ちました」

 そして、冒頭で記した心のなかでのつぶやきを、照れながら明かしてくれた。

「こういうときにゴールを決めるのは自分だと、強く思いながらプレーしていました」

 14日に行われた明治安田生命J1リーグ第29節。国際Aマッチデーウイークによる中断期間中に行われ、フロンターレが逆転で決勝進出を決めたYBCルヴァンカップ準決勝から3戦連続で同じ顔合わせとなった一戦は、リベンジを期すベガルタが主導権を握った。

 小林をはじめとする前線がプレスをかけても、後ろの選手たちが連動しない。必然的に生じたスペースを、期限付き移籍する前に清水エスパルスでYBCルヴァンカップに出場したため、規定により準決勝ではプレーできなかったMF野津田岳人らに自由に使われる。

 42分にはMF家長昭博が2枚目のイエローカードをもらって退場となる。前半の残り時間をしのいで、ハーフタイムに立て直す。とっさに描いた青写真は前半アディショナルタイム、野津田のゴールとともに崩れ去ってしまう。

 迎えたハーフタイム。鬼木達監督は精彩を欠いていたエドゥアルド・ネットに代えて、ドリブラーの長谷川をボランチに位置に投入。フォーメーションを「4‐3‐2」に変えて臨む後半へ、こんな檄を飛ばした。

「こういう試合をものにするチームが、タイトルを手にできるんだ」

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