ファーストプレーで呼び込んだ歓喜
選手の交代を告げるため、第4の審判員がレフェリーボードを掲げた。73分、役目を終えたアダイウトンが両手を差し出すと、交代選手がそれに応える。この日の先制点を挙げるなど勝利の原動力となった男と入れ替わるように、山田大記がピッチへ勢いよく駆けていった。引き締まった表情の背番号19は、それから1分もしないうちに仕事を果たすのだった。
明治安田生命J1リーグ第29節、アウェイに乗り込んだジュビロ磐田は清水エスパルスを3-0で下している。
前半立ち上がりはホームチームが先手を取ろうと前から来ていたため、磐田は我慢の時間を過ごすことになった。しかし、押し込まれながらこれといったピンチもなく、27分にはアダイウトンのゴールで試合を動かした。
「まず北川(航也)と金子(翔太)のところがどういった守備をしてくるか。それによって我々がシンプルに背後を狙うのか、ポゼッションしながら穴を突いていくのかを、特に(大井)健太郎、(中村)俊輔、(川辺)駿に伝えた」
名波浩監督の言葉だが、選手たちは相手の出方に対応しながらチャンスを作っていった。
さらにハーフタイム直前には清水が退場者を出し、数的優位の状況も手にした。後半はボールを保持し、無理せず追加点を狙うと62分に中村俊輔の蹴ったCKが直接決まった。
出番を得た山田は、ファーストプレーで歓喜を呼び込んでいる。右サイドでパスを受けた櫻内渚が縦に運んでクロスを送る。ファーサイドからPA内に侵入してきた宮崎智彦が左足ボレーで合わせると、GKが弾いたこぼれ球に山田が反応。滑り込みながら左足でネットを揺らした。
「チャンスをもらいながら、これまでなかなかチームの勝利に貢献できていなかった。名波さんからはどんどん前に出て行ってシュートを打って、好きにやっていいと声をかけてもらっていた。点を取ることができて良かった」
磐田復帰後初ゴールを振り返り、安堵の色を浮かべた。