人材には事欠かない。デシャン監督に求められる手腕
そしてもう一点、今回浮き彫りになったのは、カンテの重要性だ。ブルガリア戦の前半に左腿を痛めてピッチを退き、次のベラルーシ戦も欠場したが、中盤底でボールの流れをコントロールできる彼の采配力は中盤を落ち着かせ、攻守にメリハリをつける上で非常に貴重だ。マテュイディのようなフィジカル型の選手と組ませるのにも適している。
また、今回は不在だったポグバもやはり貴重だと感じた。この2戦のレ・ブルーは、キャラクターに乏しかった。良い選手ばかり揃っているのに、これほど印象が薄いのはなぜなのか不思議なくらいに。ポグバが加われば、プレー面でのプラスだけでなく、ダイナミックさとカリスマがチームに加味される。
所属するマンチェスター・ユナイテッドでは絶好調で今季すでに5得点6アシスト、9月の月間MVPにも選出されているアントニー・マルシャル、今夏マンチェスター・シティにディフェンダーとしては世界最高額で移籍したものの右膝の靭帯を負傷して長期療養中の右SBバンジャマン・メンディら、今回招集されなかった中にも有力な最終メンバー候補がいるから、人材には事欠かない。それだけに、その素材を最適に采配する手腕が、デシャン監督に求められている。
しかしひとまず、本戦出場権を獲得したことは、大きな成果だ。イングランドのとある熟練記者はいつも言っている。「本当に強いチームというのは、良い内容の試合で勝つチームではなく、悪い内容のときでも勝てるチームなのだ」と。
乏しい内容でも結果を出せる『何か』があること。チームスピリッツや運、個人技……チームによってそれはいろいろだろうが、その『何か』は、とても尊い要素だということだ。
(取材・文:小川由紀子【フランス】)
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