「私たちにとっては今でも“普通の人間”なんです」
16ゴール14アシストを記録した本田はオランダ2部リーグの2008/09シーズンMVPに選ばれた。
「今季、日本では僕が戦ったシーズンをテレビで見ることができていないわけですから、記事のみで状況把握されている。優勝し、僕がこうした賞をもらえたこと。それがどこまで評価されるのか、僕自身全然わからない。今(日本で)評価されないのなら、僕は結果を残し続ける必要がある。僕の中ではそういう感じです。これはあくまできっかけなんで。ビッグチャンス。チャンスをものにするかどうかは、今から次第だと思ってます。前々から言っていたように、本当の勝負は来シーズンだと自覚しています」
『勝負の年』となった2009/10シーズン、本田は結果を残した。開幕戦のPSV戦では1ゴール1アシストを決めると、デ・クールのスタンドには欧州のビッグクラブからスカウトが集まりだした。
本田の鮮やかなテクニックには、ファン・デル・ハイプという有名コメンテーターが「ほーら、ほーら、見てご覧。この本田のトラップ。まさしくこれは『サンシーロ・モーメント』。サンシーロで見られるようなプレー。それをデ・クールで本田が魅せているんだ」と言って惚れ込んだ。スター誕生――。『フェンローのローカルヒーロー』は『オランダのナショナルスター』となったのだ。
オランダメディアを後追いするように、日本のメディアも再び本田の取材を始めた。日本代表のこと、冬の移籍市場のこと――。どんどん本田の注目が上がっていった。CSKAモスクワではCLで得意のFKを決め、2010年の南アフリカW杯では日本の中心メンバーとして大活躍した。本田が日本でもブレイクしたシーズンだった。
最初に本田のことをスターとして認めたのはオランダ人だった。だけど、今も昔も本田のことをよく知るオランダ人は「圭佑はすごいサッカー選手になったけれど、私たちにとっては今でも“普通の人間”なんです」とその人となりを語るのである。
(取材・文:中田徹【オランダ】)
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