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本田圭佑 7年前

本田圭佑のオランダ凱旋。欧州で“地元のヒーロー”から“国民的スター”になった男の軌跡

text by 中田徹 photo by Getty Images

逆風に負けずVVVで結果を出し続けた本田圭佑

  あれから10年近くが経ち、1人の記者は「使命感で自分は本田を追っていた」と振り返る。

「オランダ2部リーグで本田は本当に成長していた。自分は『彼こそ日本代表に選ばれるべきだ』と思っていた。しかし、本田のことは日本で報道されていなかった。ならば、自分が記事を会社に送りつけてやろうという思いだった」

 日本メディアが撤退していた事実を、本田は知らない。それでも、いつも顔を合わせていた記者たちに“何か”を感じていたのは間違いない。本田と近しい人物は、ある日、私にそっと教えてくれた。

「圭佑はね、『俺が活躍すれば、あの人たちの生活も楽になるんやろうなあ。だから、俺も頑張らなアカンなあ』と言ってるんですよ」

 私たちにとってありがたかったのは、本田がシャドーストライカーとしてゴールに目覚めたことだった。「1試合5本のシュートを撃つ」と部屋の壁に貼って自己暗示をかけ続けた男は、第9節のエクセルシオール戦のラッキーショットで2008/09シーズンの初ゴールを決めた。そこから本田のゴールへの嗅覚が研ぎ澄まされていった。“ゴール”というわかりやすい結果さえ出してくれれば、少なくとも記事は載る。

 本田のコメント力も助けになった。当時、『スポーツナビ』に寄稿した記事から抜粋する。

カラブロ:「お前はいつもパスと走ってばっかりいるけどシュートを決めない。お前が決めているのはユーチューブ(動画共有サイト)の中だけ」

本田:「お前はへたくそや。パスもできへん。体抑えて、振り向いてシュート打つしかない」

カラブロ:「それが俺のクオリティー。俺にそれ以外求めてどうする」

本田:「お前、俺にパス出せ」

カラブロ:「何でお前にパス出さないといけない。俺がFWだ。お前がパス出せ。いつでも俺は待っているから」

 左サイドを駆け上がり、後に『ミスターVVV』の称号を得たフルーレン。カラブロ、スハーケン、エル・ガアアウイの強力3トップ。中盤の底で一度に3人をストップすることも出来たレーマンス――。そんなユニークなメンバーたちの中で、本田の輝きが増していった。自身も名プレーヤーであったファン・ダイク監督が「圭佑は、1部リーグも含めてオランダリーグ最高の10番」と称えていた。

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