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アジア 7年前

神様、仏様、ケーヒル様。豪州、偉大な“守り神”の神通力でロシアW杯へ一歩前進

text by 植松久隆 photo by Getty Images

“守り神”の劇的な復活劇。次なる決戦の相手はホンジュラス

ケーヒルが見せた会心の2ゴールはオーストラリアのサッカーファンの心に未来永劫刻まれるはずだ
ケーヒルが見せた会心の2ゴールはオーストラリアのサッカーファンの心に未来永劫刻まれるはずだ【写真:Getty Images】

 そして、試合終了間際。シリアにとってのビッグ・モーメントが訪れたかに見えた。ゴール前絶好の位置でのフリーキックを得たシリア。ボールをセットしたエースのアルソーマの顔は紅潮して泣いているように見える。熱い祈りを込めたボールは壁を越え、GKマット・ライアンの指先をかすめるように弧を描いた。しかし、僅か数センチの誤差でゴールポストに嫌われ、スタジアムに乾いた音が響いた。万事休す。内戦で荒廃した祖国の人々の思いを乗せた、シリアのW杯への挑戦は潰えた。

 “守り神(talisiman)”の劇的な復活劇で、豪州は苦しい戦いを乗り切って次なる関門へと歩を進めた。次は、大混戦となった北中米カリブ海予選で何とか踏ん張ったホンジュラス。相手に不足はない。

 11月のホーム&アウェイの2試合を前に、シリアとの激戦の翌日「ポスタコグルー監督、ホンジュラスとの大陸間プレーオフ後に退任」との報道が駆け巡った。プレーオフの結果に関わらず既に退任の意思を固めているとの報道だが、その内容自体は驚かない。ここ最近のファンやメディアからの激しい批判に腹を据えかねている様子は、メディア対応の時の態度や受け答えで十分すぎる程に伝わってきていた。

 いずれにしても、運命の大陸間プレーオフまでは既に1ヶ月を切った。監督自身の「(自身の去就に関する)報道のことは把握している。今の私の唯一無二のフォーカスは来月の2試合にしっかり備えること。4回目のW杯出場を決めるためのチームの戦いの過程に、何も妥協するつもりなどない」との強い言葉を借りるまでもなく、監督の去就は一旦置いて、万全な準備のために全力を尽くすべき時だ。

 泣いても笑っても、あと2試合。シリアとのプレーオフで理想よりも勝ちにこだわる現実路線に若干修正することで何とか結果を引き寄せたサッカルーズだが、もはや恰好や内容など、どうでもいい。次も形振り構わぬ戦いで、とにかく勝って、サッカルーズがロシアの舞台に胸を張って上がれる機会を掴みとって欲しい。その決戦の後に誰がサッカルーズを率いるかなんて気にしている段ではないーーアジアの誇りを胸に、サッカルーズが全てを懸ける決戦の日は迫っているのだから。

(取材・文:植松久隆【オーストラリア】)

【了】

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