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アジア 7年前

神様、仏様、ケーヒル様。豪州、偉大な“守り神”の神通力でロシアW杯へ一歩前進

text by 植松久隆 photo by Getty Images

もはや神通力…。千両役者ケーヒルが豪州に歓喜をもたらす

アーロン・ムーイの投入で流れが良くなったオーストラリアだったが、決勝ゴールはなかなか奪えず…
アーロン・ムーイの投入で流れが良くなったオーストラリアだったが、決勝ゴールはなかなか奪えず…【写真:Getty Images】

 実際、ムーイ投入直後からボールがよく回るようになって、動きが目に見えてよくなった豪州。そして、13分には右サイドを駆け上がりながらロギッチからのパスを受けたマシュー・レッキーが、前線に素晴らしいクロスを上げる。そこで待ち構えていたのが、千両役者のケーヒル。トレードマークの打点の高いヘディングをタイミングよく叩きつけ、同点ゴールを押し込んだ。この1点で、ケーヒルは2004年の代表デビュー以来、毎年代表でゴールを挙げたことになった。まさに、コンスタントに母国の代表に尽くし続けたレジェンドに相応しい功績だ。

 その後の前半は、豪州が圧倒的にポゼッションしてゲームをコントロールするが、シリアもよく堪えて、なかなか得点を許さない。実にポセッションでは72:28という分かりやすい展開だったが、1-1のまま熱戦の行方は残り45分に持ち越された。ポゼッションを取りながらもなかなか決定機を作れない豪州と、時折、鋭い突破で虎視眈々と勝ち越し点を狙うシリアと一進一退の攻防となった後半でも決着がつかずに、試合は延長戦に突入。場内の緊張感はピークに達しようとしていた。

 延長前半4分に試合は大きく動く。シリアのマフマド・アルマワズが2枚目のイエローカードを受けて痛恨の退場処分。体力消耗の激しいシリアは、残り時間を10人で戦うことを余儀なくされた。それでもなかなか決定機を作れない豪州は、攻撃的MFのロギッチに代えてFWトミ・ユリッチを前線に投入する。

 数的優位を得つつパワープレー、飛び道具で試合を決めに掛かろうとする姿勢を見せた。延長後半4分にその狙いが結果に繋がる。ゴール前左サイドにするすると抜け出してボールを受けたロビー・クルーズが上げたボールを、ゴール前でケーヒルが再び頭で合わせると、ボールはシリアGKの右手をかすめネットを揺らした。ケーヒルの代表通算50得点目は豪州を土俵際で踏ん張らせる決勝点の貴重なゴール。千両役者の大見得に場内のボルテージは最高潮に達する。

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