初キャップ時からのオランダで進化
彼が入った時間帯の日本はそれまでの4-2-3-1ではなく、4-3-3へとシフト。井手口陽介(G大阪)とインサイドハーフを形成したが、2人の新たなコンビネーションも新たな可能性を感じさせた。
「自分がパスを出した次の人がミスしたら、それは俺のミスを同じなんだ。つねに次の人がラクなパスを出せて、ラクな状況でやれることを意識してプレーしたし、それが前よりはできるようになったかな」と本人も話したが、初キャップ当時の邪念が消え、フォア・ザ・チームに徹することができるようになったのも特筆すべき点。これもヘーレンフェーンで黒子の仕事を経験したから賜物だろう。
最大の見せ場は乾からのマイナスクロスを受け、左足を振りぬいた後半40分の決定機。強烈な一撃はGK正面に飛び、ゴールには至らなかったが、恩師であるジュビロ磐田の名波浩監督が「あいつは左足を振れる。ここ一番のところで点が取れる」と評したシュート力の片りんを示したのは確か。卓越した創造性とアイディアで武器とする香川、「動きを止めたら倉田じゃない」とヴァイッド・ハリルホジッチ監督から言われるほどの豊富な運動量でのし上がった倉田とも違ったスケール感と戦術眼を垣間見せたことで、小林祐希には代表定着への期待が一気に高まってきた。
そこで注目されるのが10日の次戦・ハイチ戦(横浜)だ。ニュージーランド戦翌日の7日の控え組トレーニングで、指揮官は杉本健勇(C大阪)を1トップに据え、右FWに浅野拓磨(シュツットガルト)、左FWに乾、インサイドハーフに小林と倉田、アンカーに遠藤航(浦和)を配置する形を試していた。この通りのメンバー構成で行くかどうかは定かではないが、小林祐希の代表初先発の時が刻一刻と近づいているのは間違いない。
そもそも今季欧州組で最もコンスタントにピッチに立っている選手の一人なのだから、代表スタメン抜擢のタイミングが遅すぎると言っても過言ではない。「(長谷部誠=フランクフルトや香川といった)今の代表の中心選手たちが抜けたら、日本代表はアジアですら勝てない時期が続くかもしれないって思われている。『そんなの冗談じゃねえ』って感じですね。ふざけんなと。そんなこと、絶対言わせないって俺は思ってます」と彼は今年2月に話していたが、そのくらいの気概を持つ中堅世代の人間が頭角を現さなければ、日本の底上げはない。強心臓の小林祐希がFIFAランク48位とほぼ同格のハイチ相手にどこまで冷静にチームをコントロールし、攻撃のタクトを振るうことができるのか。そこは今後に向けてしっかりと見極めるべき点だ。