“周りを生かせるサイドバック”へのシフト
サイドバックと言うと昔は中盤やウィングの選手に使われるイメージが強かったが、現代サッカーではサイドバックのハンドリングが勝負のポイントになってきている。
もっともブラジルW杯の前あたりまでは長友はもっぱら“使われる”タイプのサイドバックであり、ガンガン仕掛けることで持ち味を前面に押し出していた。良くも悪くも彼の突破力がチャンスに直結していたわけだ。
しかし、当時について「自信が過信に変わっている部分があった」と正直な心境を語る長友は“周りに生かされるサイドバック”から“周りを生かせるサイドバック”へのシフトを模索していたのだ。
それが時に“衰え”や“勢いが無くなった”と捉えられることがある。確かに爆発力と言う意味では20代より絶対値は落ちているかもしれないが、90分走る能力は維持しており、現在はそれを周囲との関係の中で出し入れすることで効果を生んでいることは確かだ。
長友との関係について「追い越したり、また自分が追い越したり、そこに関しては非常に良かった」と武藤。一方で乾は「あれだけいいタイミングで上がってもらえるとホントにパス出すだけなので、あとはこっちのセンスが問われるところ」と説明する。
今回は左太腿の張りによりベンチから見守った原口元気も含め、ますます競争が熾烈になる左サイドは日本のストロングポイントになりつつあるが、彼らの良さを引き出しているのは背後の長友だ。
その重要性はさらにクローズアップされてしかるべきだが、逆に言えば長友を欠いた時に代わりに出た左サイドバックがどこまで前の選手を生かせるかというのも今後の強化ポイントになる。
(取材・文:河治良幸)
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