ハリルの頭にある「3つのチームの形」
山口と井手口をインサイドハーフに並べれば中盤のボール奪取力が高まるイメージは強いが、基本的には二人ともボランチの選手であり、相手のアンカーやボランチの選手が組み立てるチームにはトップ下の経験な香川のようなタイプの方が守備面でも機能しやすく、攻撃でのメリットも大きい。
その視点でニュージーランドのシステムを見てみたい。コンフェデレーションズ杯では[5-3-2]を固定的に採用し、時間帯によっては両SBがサイドハーフの位置に上がる[3-1-4-2]を形成していた。
中盤は基本的に3ハーフで、中央の選手がアンカー的なポジションでボールを持ち、左右の選手にショートパスをつないだところから両SBのオーバーラップや前線へのロングボールが出てくるケースが多い。
そうした相手の特徴を考えると今回は[4-2-3-1]の方がシステム上はまりやすい。つまり香川をトップ下に配置し、井手口と山口をボランチに並べる布陣だ。仮に倉田がスタートから起用される場合は香川のポジションになるだろう。小林祐希はトップ下もできるが基本的にはボランチに入る可能性が高い。
ただ、ニュージーランドは時間帯や得点経過により中盤を一枚削り、前線にFWを増やして[3-4-3]あるいは[5-2-3]という形にしてくることがある。その場合も日本は同じメンバーのまま中盤をアンカーとインサイドハーフの構成に変更することもできるし、それに伴い香川を遠藤航に代え、山口と井手口のインサイドハーフにシフトすることもできる。
ハリルホジッチ監督は現時点で「3つのチームの形」が頭にあるという。おそらくは[4-3-3]と[4-2-3-1]、そしてFWを前線に2枚置く[4-4-2]だろう。過去に彼が率いたチームを見れば3バックの引き出しもあるが、限られた準備期間を考えると封印したままSBのチョイスにより似た機能性を実現することで乗り切るかもしれない。
そうしたシステムの中でも、各ポジションに起用する選手のタイプで狙いのディテールも異なってくるが、香川と井手口という未使用の組み合わせが良いケミストリーを生み出せば、日本代表はロシアに向けて効果的な中盤のユニットを1つ手に入れることになる。
(取材・文:河治良幸)
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