「『谷間』という印象はない。自分らしくやっていきたい」
その後、J2降格を余儀なくされた磐田で2014年の1シーズンを過ごし、高校時代を過ごした東京のクラブであるFC東京へ移籍。1年目は9点、2年目は6点を挙げている。3年目の今季は大久保嘉人、永井謙佑、ピーター・ウタカの加入で出場機会が大幅に減ったものの「すごいメンバーとポジション争いできているのは幸せなこと」とポジティブに捉えている。
そうやって前向きにコツコツと努力できるのが、谷間の世代のエースストライカーの長所である。「自分たちは『谷間』という印象はない。自分らしくやっていきたい」と話していた男の矜持は今もこの先も変わることはないはずだ。
「僕らは30代後半になりますけど、上の世代が今もやってるじゃないですか。満男(小笠原=鹿島)さん、ヤット(遠藤保仁=G大阪)さんとか第一線でやってるわけじゃないですか。中澤佑二さんはもっと上だし。
そういう人たちをすぐそばで見れてるのは大きいのかなと。だから自分たちが上に行った感は全然ないです。もしかしたら、それが谷間の世代のメリットかも。タカさんもそうですけど、ホントにいいお手本がすぐ近くにいる。それを忘れずに、僕はこれからも上を目指してやっていきたいです」
以前は「寡黙すぎる点取屋」と言われた前田遼一。だが、36歳を目前にして、いい意味で自己表現できるようになってきた。そういう意味でも遅咲きの男がサッカー選手として華々しい晩年を過ごすことを切に祈りたい。
(取材・文:元川悦子)
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