2度の大ケガ乗り越え…1トップとして飛躍的に成長
昨年の冬からパーソナルトレーナーをつけ、ドイツで二人三脚で肉体改造に取り組んだ成果もあって、屈強なドイツ人DFに囲まれても決して倒れることはなくなった。そのタフさと逞しさは今や大迫に匹敵するものがある。
ジョン・コルドバや新加入のクラウディオ・ピサロのサポートを得られるケルンの大迫以上に、マインツの武藤は攻撃陣のサポートが満足にない状態でボールを収める仕事をこなしている。そこは特筆すべき点。かつて岡崎慎司(レスター)もマインツで同じ状況に置かれて飛躍的成長を遂げたが、武藤も絶対的1トップとして他を圧倒しつつあるのだ。
そんな今だからこそ、ハリルホジッチ監督は彼を代表の最前線でトライすべきではないか。
「自分はそんなに体が大きいわけでもないし、収めるのがすごくうまいわけでもないですけど、代表の場でもそれができるってところを見せないといけない。すべてにおいて柔軟な対応をしていきたい」と武藤も意欲満々に語っている。
少し前の彼は優等生的なイメージが強かったが、2度の大ケガに見舞われ、ドイツや日本代表で逆境に直面する中で、いい意味でのエゴを身に着けた。点取り屋にはそういったメンタリティが多少なりとも必要だ。そういう意味でも、武藤抜擢への期待は高まってくる。
2010年南アフリカW杯最終予選突破を決めた2009年6月のウズベキスタン戦(タシケント)でベンチ外の屈辱を味わった香川真司(ドルトムント)が翌年には代表攻撃陣の看板選手に上り詰めたように、武藤もオーストラリア戦ベンチ外からの逆転は可能なはず。
「そのチャンスは誰にも等しくあると思うんで、あとは掴むか掴まないか。ホントに持ってるか持ってないかってところだと思う」と彼自身も勝負をかけていくつもりだ。長年の夢であるロシアW杯の大舞台に立つべく、この2連戦では見る者をくぎ付けにするパフォーマンスを見せたいところだ。
(取材・文:元川悦子)
【了】