「パターンがないのが自分の良さ」
どん底から這い上がるためにはネガティブになっている暇などない。がむしゃらに、積極的にやるということだけを考えて、武藤はこの1ヶ月間プレーしてきた。その明確な答えが9月の3得点だ。9日のレバークーゼン戦で挙げた今季リーグ初得点は前半終了間際、左サイドバックのダニエル・ブロジンスキが上げたクロスをファーサイドで待ち構えて左足で合わせるスーパーゴールだった。
20日のホッフェンハイム戦での今季2点目は前半16分、華麗なドリブルで複数の相手DFをかわして左足を振り抜く一撃だった。そして前述の通り、ヴォルフスブルク戦のゴールは打点の高いヘディングシュート。実に多彩なパターンで得点を重ねているのがよく分かる。
「(決まった)パターンがないのが自分の良さでもあると思うんで。マインツ1、2年目はケガをして体の調子が上がり切らず、難しい時もありましたけど、今、どこからでも点をとれるFWになりつつあるし、そういう自信もある」と本人も語気を強めたが、日本代表はさまざまな形から点の取れるFWを喉から手が出るほど欲している。武藤がその枠に該当する選手の1人になろうとしているのは紛れもない事実。本人の言う「シーズン15得点」も夢ではない。
もちろんゴールだけではない。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督のデュエルを重視するサッカーに置いて、前線のターゲットマンは非常に重要な存在だ。昨年11月のロシアW杯最終予選・サウジアラビア戦(埼玉)以降、大迫勇也(ケルン)が不動の1トップに君臨するようになったのは、前でボールを収めて時間を作る能力を高く買われているからと言っても過言ではない。
サイドアタッカーとトップの両方をこなせる武藤はそういうタイプではないと見られてきたが、今季マインツで1トップに入ることで、体を張ったポストプレーも目覚ましいレベルアップを遂げている。