「あのシャルケ戦」を超えるループシュート
フラストレーションこそが芸術の源なのだろうか。9月30日に行われたブンデスリーガ第7節、対FCアウクスブルク戦。1-1で迎えた23分、誰もが目を奪われた。立役者はボルシア・ドルトムントの背番号23。ペナルティエリア内の右側で、アンドリー・ヤルモレンコからのパスを、右足でふわりと浮かせてシュート。GKヒッツの右手も及ばず、ボールはそのままゴールに吸い込まれていった。
香川真司は「まあシャルケ戦じゃないですけど」と前置きした上で、「本当にあの瞬間に、ループを狙える、そういうのがイメージとして湧いて、無駄な力もなかった」と振り返った。
「僕としては、本当にシャルケ戦以上の、あのゴールも素晴らしかったですけど、あれ以上に、美しいって自分で言ったら変ですけど、ゴールが決まったと思っているし、良かったと思います」
勝ち越しのループ。ただ美しかった。「シャルケ戦」に匹敵する、いや、「シャルケ戦以上の」鮮やかなゴール。
香川の言う「シャルケ戦」とは、16年4月10日に行われた15/16シーズンの第29節。敵地でのレヴィア・ダービーのことだ。この時はエリアの外側から、49分、今回のアウクスブルク戦と同じように右から左へループシュートを決めている。フェルティンス・アレーナを包んだ、一瞬の静寂。
それからおよそ1年半後、香川はまたしても、ブンデスでは彼にしか成し得ない芸術的なゴールを、今度はアウクスブルクの地で決めたのだ。
香川は「やるしかなかったですし、見せるしかなかったです」と言う。魔法のようなループを生んだのは、ヤルモレンコとの間で深まる連係や、持ち前の技術だけではなかった。