ベトナム黄金世代はいかに育まれたか
“東南アジアの五輪”と称される東南アジア競技大会(SEA Games)が、8月にマレーシアの首都クアラルンプールで開催された。花形競技の男子サッカーでは各国のU-22代表が東南アジア王者の座をめぐって激突したが、優勝候補の一角とされたベトナムは、まさかのグループステージ敗退。
チームを率いたグエン・フー・タン監督(A代表・U-22代表兼任)はこの責任を取って辞任した。結局、大会はグループステージでベトナムを下したタイが3連覇を達成。ベトナムには、ただ大きな失望感だけが残る大会となった。
今大会を振り返る前に、現在のベトナムサッカーを語る上で欠かせない存在があるので、ここで先に触れておきたい。国民的人気クラブのホアン・アイン・ザライ(HAGL)と、その下部組織HAGLアーセナルJMGアカデミーの存在だ。
SEA Gamesに出場したU-22ベトナム代表は、このHAGL出身のメンバーがスタメンの半分近くを占めていた。HAGLは不動産開発などで財を成したベトナム有数の大富豪であるドアン・グエン・ドゥック氏が2001年に設立。下部組織のアカデミーは、イングランドのアーセナルおよびフランスのJMGアカデミーとの提携で2007年に設立された。国内初のプロサッカー選手育成アカデミーとして、当初から大きな注目を集めていた。
同アカデミーでは、外国人指導者のもと徹底したテクニック重視のサッカーを教え込まれる。アカデミー生はその後、U-17やU-19など年代別代表の主力となり、各年代の代表ではチームの7割以上をHAGLのメンバーが占めた。
中でもチームの中心であるFWグエン・コン・フオン(元水戸)、MFグエン・トゥアン・アイン(元横浜FC)、MFルオン・スアン・チュオン(江原FC)、MFグエン・バン・トアンといったアカデミーの面々はアイドル並の人気を獲得。それまでのロングボールに頼ったカウンター一辺倒のサッカーとは異なる攻撃的なスタイルが多くのファンの心をつかんだのだ。