車屋は実力を証明できるか。11月には欧州遠征のチャンスも
現在はどちらかと言えば酒井宏樹が主力を務める右サイドが攻撃の起点になる傾向が強い。長友も高い位置からの仕掛けやクロスでチャンスを生み出すことはできるが、左からの組み立てに幅をもたらすことができれば中盤から後ろでボールを失うリスクも減少するはずだ。
車屋には当然ながら守備での強さや素早い攻守の切り替えなども求められるが、彼の持ち味である攻撃センス、特に左利きらしいライン際を使った組み立てを発揮できれば代表定着への道が開けてくるはず。ハリルホジッチ監督はブラジルW杯のアルジェリア代表でファウジ・グラムとジャメル・メスバフという2人の左利きサイドバックを選出している。
おそらく東アジアE-1サッカー選手権に向けても指揮官は左利きサイドバックに注目して残りのJリーグを視察するだろう。横浜F・マリノスの山中亮輔や清水エスパルスの大型DF松原后などJリーグで高い能力を見せている選手は候補となるし、チームの調子が上がらないG大阪で気を吐く藤春が再びテストされる可能性もあるが、そう候補が多いわけではない。
10月の2試合で車屋がアピールに成功すれば、11月の欧州遠征にそのまま招集し、世界的な強豪を相手に左利き左サイドバックの性能を確認することも可能になる。高い運動能力と川崎Fで培った攻撃スキルを兼ね備える車屋とはいえ、いきなり原口元気や乾貴士と良い連携を築き、大迫勇也や杉本健勇に良質なクロスを合わせるのは容易ではないだろう。だが代表定着のためには実力を証明する必要がある。彼のパフォーマンスが今後の左サイドバックの競争に大きく影響していくことは間違いない。
(取材・文:河治良幸)
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