「自分こそがエース」と我を張り合うこと自体は問題ではない
ネイマール入団が決まった時には巨額の移籍金や、バルセロナとの確執、ファイナンシャルフェアプレーについてなどが連日紙面をにぎわせたが、それが一段落して、メディアも次のネタを探していたタイミングだった。
『いつか勃発することが確実だった2人のエゴ問題は、予想以上に早く訪れた』と、まるで「待ってました!」といわんばかりの論調で報じていたメディアもあったくらいだ。
そもそも世界トップクラスのストライカー同士なら、ある程度のエゴはあって当然。カバーニは、イブラが去った昨シーズン、年間49得点、リーグ・アンでも35得点で得点王に輝き、ようやく「自分の時代が来た!」と思っていたはず。
かたやネイマールは、カタール勢が『ビッグイヤー請負人』として招いた最強の切り札。彼らは「君がこのチームを欧州の頂点に導くのだ!」と言って口説いただろうし、ネイマール自身も、メッシ、スアレスとのMSN体制を抜け出し、「今度こそは自分が大エース」と思っていたかもしれない。
がしかし、2人が「自分こそがエース」と我を張り合うこと自体は問題ではないように思う。肝心なのは、チームとして2人を使いこなすこと、そして彼ら自身が、同じ目標のために協力し合えるかだ。
タイトル、トロフィーといった結果に貢献できなければ、またそのことに尽力しようと努力できる器がなければ、そもそもそのクラブにとって真のエースとは言えないからだ。そしておそらく、彼ら自身もそのことを理解しているし、お互いをリスペクトしている。
バイエルン戦は両エースが揃って得点し、3-0で快勝、グループ首位に立つというハッピーエンディングだった。今後もネイマールとカバーニが互いに負けまいと点を取り合うなら、スコアシートが芳醇になってチームにとってもよろこばしいことだ。
前半にゴールを決めたのはカバーニなのに、ハーフタイムにサポーターが歌っていたチャントは『メルシ~ネイマール~♪』。79分にムバッペがディ・マリアと交代したときも、会場中にけたたましいムバッペコールが鳴り響いた。
ファンは今夏加入した2人に絶大な期待を寄せている。入団5年目のカバーニには、ファンもちょっと新鮮さが薄れてきているのかもしれない。ここはひとつ、エル・マタドールには大人になって、チームの栄光のために尽力してもらいたい。
(取材・文:小川由紀子【パリ】)
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