選手のコンディションが整わないなかでのやり繰り
だが、これで選手たちにきちんと攻撃のスイッチが入るところが、ユーベのしたたかなところである。そして69分、沈滞気味だった攻撃のリズムに変化をつけたのは、イグアインの投入によってCFからサイドへと”戻った”マンジュキッチだった。
左サイドからやや中へ絞って対面のサイドバックを引きつけたのち、空いたスペースにアレックス・サンドロが上がったことを確認。そしてDFを背負ってゴールに背を向けたまま、ポジションを取って後方からパスを呼び込んだ。そしてジョルジョ・キエッリーニから縦パスが入ると、ダイレクトで左のスペースへと流した。
それはアレックス・サンドロに向けた絶妙なスルーパスとなり、虚を突かれたオリンピアコスのDFラインに乱れができた。そのギャップをめがけてクロスが放たれ、目ざとく反応したのはイグアイン。シュートは一度DFに弾かれたものの、そのこぼれ球を拾って正確にシュートを流し込んだ。
こうして先制し、相手が前に出ざるを得ない状態になれば追加点も決められる。80分、今度はイグアインが下がってパスを出し、動きが幾分自由になったディバラがエリア内を突破。柔らかいタッチでGKを超えたシュートはDFにクリアされるも、チャンスを信じてゴール前に詰めていたマンジュキッチの眼前にこぼれた。
現時点では、サイドにマンジュキッチを置いたほうが連係は成り立つ。イグアインも出せば即座に点に絡んだ。だが、それを最初からやっておけば楽に戦えたのではないか、と考えるのは結果論にしても早計である。あくまで選手のコンディションが整わないからそうせざるを得なかったという事情があるのだ。「今月で6試合目。そうなれば疲れるのは当然のこと」とアッレグリは試合後の記者会見は語った。
そしてアッレグリは「イグアインにも言ったことなのだが」と断ってこう続けた。
「彼はユーベにとって間違いなく重要。だがもし自分が本来の自分でないときは、他の選手が上に来る。ユーベのようなチームでは当然のことだ。今日は出てきてから、この1ヶ月半出来てなかったキレのあるプレーをやってくれた。彼はコンディションを上げてきている。そして、故障した他の選手も復帰して来る」
選手のコンディションアップとともに、もっと良いサッカーが見せられるという確信を、指揮官は抱いている。
(文:神尾光臣【イタリア】)
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