南アW杯で「『俺らはやれるんだ』と同世代の仲間が証明してくれた」
そうやって石川が自分らしく生きられるのも、81年生まれの仲間たちの影響が少なからずあるはず。かつて「谷間の世代」と称された選手たちは実に個性豊かだ。
同じFC東京のチームメートである前田遼一、浦和レッズのキャプテンマークを巻く阿部勇樹、今季J2アシストランクトップの駒野友一(福岡)、36歳にして海外に再チャレンジした松井大輔(オドラオポーレ)のように現役にこだわる選手もいれば、引退してビジネスを立ち上げると同時にプロゴルファーを目指す鈴木啓太(元浦和)、大分市議会議員として地元のスポーツ振興を目指す高松大樹(元大分)のような人材もいる。
「僕らの世代は物凄くまとまりが強いんです」と石川も語気を強める。
「『谷間の世代』と長い間、言われてきたけど、『ああそうか』って納得してたやつは1人もいないと思いますね。ユース代表の頃、監督の西村(昭宏=高知ユナイテッドスーパーバイザー)さんやコーチの剛(小野=FC今治育成副部長)さんに『谷間と呼ばれて悔しくないのか』とよくハッパをかけられていたけど、僕自身は『絶対に黄金世代(79年組)を超えてやろうう』と思っていたから。それはみんな同じだったんじゃないかな。
とはいえ、あの時点では小野伸二(札幌)さんやヤット(遠藤保仁=G大阪)さんたちとの実力差は感じてました。彼らは憧れの存在だったし、プロ1~2年目でJリーグの試合に出ていましたからね。ただ、2002年日韓ワールドカップに出た市川(大祐=清水アカデミースタッフ)さんとは1つしか違わなかった。決して遠い存在じゃなかったし、『自分たちもやればできるんだ』って気持ちは心のどこかにありました。
それが結実したのが2010年南アワールドカップだったのかな。コマちゃん(駒野)がパラグアイ戦でらPKを外したことがクローズアップされるけど、コマちゃん、松井、阿部ちゃん、闘莉王(田中マルクス闘莉王)、嘉人(大久保=FC東京)、今ちゃん(今野泰幸=G大阪)、矢野貴章(新潟)、岩政(大樹=東京ユナイテッド)といった選手たちがアテネ世代から出た。
アテネで惨敗して『この野郎』って思ったメンバーが奮起したから、日本は16強入りできたと思います。僕は最終登録に入れなかったけど、『俺らはやれるんだ』『力があるんだ』と同世代の仲間が証明してくれた。そういう選手たちと切磋琢磨することができ、いい時代を過ごせたことに心底、感謝しています」