交換したユニフォームは今どこに? 2人の友情は永遠のものに
7月の試合で交換したユニフォームは今どこにあるのだろうか【写真提供:アビスパ福岡】
ところで、7月に交換したお互いのユニフォームは今どうなっているのだろうか。2人にそれぞれ聞いてみた。
「(シシーニョの)ユニフォームは実家に飾ってます。自分の入団した年からのユニフォームを全部飾ってあるんですけど、国見の同級生のユニフォームだったり、そこにプラスして飾っています」
こう語るのは城後だ。実はJリーグでユニフォームを交換するのは、シシーニョが2人目だったという。10年以上のプロキャリアを誇りながら「渡邉千真と交換したくらいしか記憶にない」と語る。渡邉は国見高校時代の同期だった。
ではシシーニョは城後のユニフォームをどうしているのだろうか。こちらからも意外な答えが返ってきた。
「僕のスペインの家にある。シャビやイニエスタ、ダビド・シルバのユニフォームと一緒に置いてあるよ」
さすが元スペインU-21代表と言うべきか。出てくる名前の格が違う。その彼らと城後が並んでいると知って、なんだか誇らしい。
シシーニョと城後は特に連絡先などは交換しておらず、普段から連絡を取り合っているわけではない。あくまでピッチ上での対戦を楽しむ。不思議だが、どこか理想的な、少年のような友人関係だ。
「正直もっと長い時間プレーして、お互いの良さを間近で見れればよかったですね。僕はずっと、前半からベンチで見ていたんですけど、岐阜は最近すごくいいサッカーをしていて、シシーニョ自体もすごくいいプレーをしていたので、ベンチでみんなが『あいつうまいな』っていう話をしていた。『お前の友達だろ?』みたいな話もしていたので、自分のことをリスペクトしてくれている選手が、自分のチームメイトにもいい選手だなって言われて僕自身もすごく嬉しく思っていました。また機会があればどこかで(一緒に)プレーしたいと思います」(城後)
2人が再会を望むのは、あくまでピッチの上である。来季以降、対戦する機会があるかはわからない。福岡か岐阜のどちらかがJ1昇格を果たせば、対戦できるチャンスはぐっと少なくなる。あるいはシシーニョか城後のどちらかが移籍するとなれば、日本で同じピッチに立つ機会は訪れないかもしれない。
それでもいつか、たとえ戦う場所が変わったとしても、2人がまた同じピッチに立つ日は来るのではないか。そんな気がしてしまう。スペインと日本、遠く離れて交わることのないように見えた2人の距離は、運命だったかのように縮まり、そしてゼロになった。シシーニョと城後、2人の永遠のサッカー小僧が紡いだ、国籍という壁を越えた友情はこれからも続いていく。
(取材・文:舩木渉)
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