日本語で交わしたある約束。ジョークも日本語で
シシーニョは城後寿にサインを入れてもらった自前のユニフォームを手に笑みを浮かべる【写真:舩木渉】
シシーニョは城後にサインをもらうと同時に、ある約束も交わした。「城後さんにワインを送りたいです。住所を教えてください」と、日本語で申し出たのである。ユニフォームを交換した2ヶ月前のアウェイゲームと、今回のホームゲームの2度にわたり、城後の母親からお土産をもらったのでお礼がしたいとのことだった。取材中も大事そうに手に握っていた「ふくや」の紙袋が、そのお土産だった。
サッカー選手として多彩な経験を積んできたシシーニョだが、実は意外な“副業”も持っているようだ。バレンシアの下部組織時代から親友ダビド・シルバとともに、地元スペインでワインの製造や販売に携わっているという。「お酒は大好き」という城後も、喜んで友人の申し出を受け入れた。
今回の取材を通して実感したのは、シシーニョの日本語の上達ぶりである。岐阜のチームメイトであり、メキシコでのプレー経験から流暢なスペイン語を操る小野悠斗は以前、「シシは本当にすごい。遠征の時や試合の後、バスや新幹線の中でも日本語の勉強をしている」と、その熱心さについて話していた。
テレビカメラの前でも日本語を披露したシシーニョに、あえてスペイン語や英語を使わず「日本語がうまくなっていますね」と尋ねると、間髪入れず「日本語は下手になります」とジョークで返してきた。
「(日本語を話そうと)努力しているよ。まだ僕の日本語は不十分だから、喋ろうとしているし、もっと学びたいし、チームメイトとも(日本語で)コミュニケーションをとりたい」
来季が始まる頃には通訳が不要になっているのではないか。そんな期待を抱くほどに日本語が上達している。まだ来日して1年に満たないヨーロッパ出身の選手が、これほどまで日本に馴染んでいる姿はあまり記憶にない。
「SNSの日本語での投稿も自分でやっているよ。結構時間がかかるけど、自分でやってみようと思っているんだ」ともシシーニョは明かす。漢字はまだ難しいようだが、会話に支障はないだろう。